BIMとCIMの違いとは?建築と土木の視点で整理

この記事の要約
- BIMは「建築」、CIMは「土木」が主な対象分野
- BIMは建物詳細、CIMは地形やインフラ全体を扱う
- 国交省は両者を包含する「BIM/CIM」呼称を推進
- 目次
- BIMとCIMの基本的な違いとは? なぜ今注目されるのか
- BIMとは? 建築分野での活用を理解する
- BIMの基本的な定義
- BIMの主な特徴とメリット
- BIMが主に使われる分野
- CIMとは? 土木分野での活用を理解する
- CIMの基本的な定義
- CIMの主な特徴とメリット
- CIMが主に使われる分野
- BIMとCIMの決定的な違いを徹底比較
- 「BIM/CIM」という言葉の整理
- 一目でわかる!BIMとCIMの比較表
- 1. 対象分野とモデル化のスケール
- 2. 目的と活用フェーズの違い
- BIMとCIM、どちらを学ぶべき? 導入時のよくある疑問
- 基本は自分の専門分野に合わせる
- 両方の知識が必要になるケースとは?
- 導入コストや学習の難易度は?
- まとめ:BIMとCIMは対象分野と目的が異なるが、連携も進む
- BIMとCIMに関するよくある質問
BIMとCIMの基本的な違いとは? なぜ今注目されるのか
建設業界でよく耳にする「BIM(ビム)」と「CIM(シム)」。どちらも3次元モデルを活用する手法ですが、その違いを正確に理解できているでしょうか?この記事では、建築分野のBIMと土木分野のCIMについて、それぞれの定義、特徴、そして決定的な違いを、初心者にもわかりやすく整理して解説します。
- この記事で解決できる疑問
・ BIMとCIMがそれぞれ何なのか知りたい
・ 建築と土木でなぜ呼び方が違うのか疑問に思っている
・ どちらの知識が必要になるのか判断したい
このような疑問を持つ方に向けて、両者の本質的な違いと共通点を明確にします。
BIMとは? 建築分野での活用を理解する
まずは、対策キーワードでもあるBIM(Building Information Modeling)について詳しく見ていきましょう。BIMは主に建築分野で発展してきた概念で、従来の2D図面による設計・施工の課題を解決する手法として急速に普及しています。建物という複雑な構造物を、デジタル上で精密に構築する技術です。
BIMの基本的な定義
BIMとは、一言でいえば「コンピューター上に現実と同じ建物の3Dモデル(デジタルツイン)を作り、そこにコストや仕上げ、部材の仕様といった属性情報を追加して、建築の設計、施工、維持管理の各プロセスで情報を活用する仕組み」のことです。
単なる3Dの「形状」モデルではなく、部材の材質、寸法、コスト、メーカー名、耐火性能といった「情報(Information)」を持つデータベースそのものです。この情報を活用(Modeling)することこそがBIMの本質です。
BIMの主な特徴とメリット
従来の2D図面とは異なり、BIMは3Dモデルと情報が一体化しています。これにより、以下のようなメリットが生まれます。
・ 可視化の向上: 3Dモデルで複雑な形状や納まりを直感的に理解できます。施主や関係者との合意形成がスムーズになります。
・ 整合性の確保: 1つのモデル(BIMモデル)を修正すれば、関連する全ての図面(平面図、立面図、断面図など)や数量表が自動で更新され、図面間の不整合を防ぎます。
・ 干渉チェック: 配管と梁のぶつかり(干渉)など、施工前にデジタル上で問題を発見できます。これにより、現場での手戻りやコスト増を防ぎます。
・ 情報の一元管理: 設計情報、コスト、工程(スケジュール)などの情報をモデルに集約できます。属性情報を活用して、精度の高い積算やシミュレーション(日照、エネルギー効率など)も可能です。
BIMが主に使われる分野
BIMは主に建築分野で活用が進んでいます。
・ 高層ビル
・ マンション
・ 商業施設
・ 病院、学校などの公共施設
・ 戸建て住宅
これらの「建物(Building)」の設計・施工における合意形成、品質確保、効率化に大きな力を発揮します。
CIMとは? 土木分野での活用を理解する
次に、CIM(Construction Information Modeling/Management)について解説します。CIMは、BIMの概念を土木分野特有の事情に合わせて適用・発展させたものです。日本では特に国土交通省の施策と強く結びついています。
CIMの基本的な定義
CIMは、土木分野において、3Dモデルを活用してプロジェクトの全段階(調査、設計、施工、維持管理)で情報を共有・活用し、生産性向上を目指す取り組みです。
国土交通省が推進する「i-Construction(アイ・コンストラクション)」の中核をなす概念でもあります。i-Constructionは、ICT(情報通信技術)を全面的に活用し、建設現場の生産性を飛躍的に向上させることを目的とした施策です。
[出典:国土交通省「i-Construction」]
CIMの主な特徴とメリット
CIMは、建築物単体ではなく、地形や地盤、広範囲なインフラ構造物(道路、橋、ダム、トンネルなど)を対象とする点が特徴です。
・ 広範囲・複雑な形状のモデル化: ドローン測量などで得た3次元の地形データや、ボーリング調査による地質データと統合したモデルを作成します。
・ 施工の効率化: 3Dモデルデータ(設計データ)を建設機械(ICT建機)と連携させ、丁張り(ちょうはり)作業なしで自動・半自動での掘削や盛土が可能になります(ICT活用工事)。
・ 維持管理への活用: 構造物の点検履歴や補修履歴を3Dモデルと紐づけて管理し、インフラの長期的なメンテナンス(予防保全)に役立てます。
・ プロセス全体の情報連携: 調査・設計段階から施工、維持管理までの全プロセスで情報を一貫して活用し、無駄を排除します。
CIMが主に使われる分野
CIMは主に土木分野(インフラ整備)で活用されます。
・ 道路、高速道路
・ 河川、堤防
・ 橋梁(橋)
・ ダム
・ トンネル
・ 土地造成
特に公共事業において、国土交通省の主導で導入が強力に進められています。
BIMとCIMの決定的な違いを徹底比較
ここまで見てきたように、BIMとCIMは、どちらも3Dモデルに情報を持たせるという点で共通していますが、その成り立ちや目的、対象に明確な違いがあります。ここでは、両者の本質的な差異を「BIM/CIM」という言葉の整理と、具体的な比較表を用いて深掘りします。
「BIM/CIM」という言葉の整理
近年、国土交通省は「BIM/CIM(ビムシム)」という呼称を推進しています。これは、BIMとCIMの基本的な概念が共通していることから、両者を包含する用語として使われています。
背景には、建築分野で先行していたBIMの知見を取り入れつつ、土木分野のCIMを推進する狙いがあります。また、将来的には建築と土木の垣根を越えたデータ連携(例:駅ビル(建築)と線路・ホーム(土木)の一体的な整備)も視野に入れています。
ただし、現場レベルでは依然として「建築=BIM」「土木=CIM」という使い分けが一般的です。この記事でも、その違いを明確にするために分けて解説しています。
[出典:国土交通省「BIM/CIMポータルサイト」]


一目でわかる!BIMとCIMの比較表
BIM(建築)とCIM(土木)の主な違いを、対象分野、モデル化のスケール、目的などの観点で以下の表に整理します。
| 比較項目 | BIM (Building Information Modeling) | CIM (Construction Information Modeling/Management) |
|---|---|---|
| 主な対象分野 | 建築(ビル、マンション、施設など) | 土木(道路、橋梁、ダム、河川、地形など) |
| モデル化の対象 | 建物(内部空間、設備、部材) | インフラ構造物、地盤、広範囲の地形 |
| 主な活用目的 | 設計の効率化、施工時の整合性確保、可視化 | 生産性向上(i-Construction)、施工の自動化、維持管理 |
| データ活用の特徴 | 建築物のライフサイクル(特に設計・施工) | プロジェクトの全段階(調査~維持管理) |
| 関連する政策 | (民間主導で発展、近年は国交省も推進) | i-Construction(国土交通省が強力に推進) |
1. 対象分野とモデル化のスケール
最大の違いは対象分野とそれに伴うスケール(規模感)です。
BIMは「建築物」という比較的限定された範囲(敷地内)を対象とし、内部の部屋、設備、部材といった詳細な情報を高密度にモデル化します。いわば「箱」の中身を精密に作るイメージです。
一方、CIMは「地形」や「地盤」を含めた広大なエリアや、道路・橋梁といった「線形・面的な構造物」を扱います。数キロメートルに及ぶ道路や河川全体をモデル化することも珍しくありません。
2. 目的と活用フェーズの違い
BIMは、建築設計事務所やゼネコンが中心となり、設計図面の整合性確保や施工時の手戻り防止(干渉チェック)など、主に設計・施工フェーズの効率化と品質確保を目的に発展してきました(近年は維持管理での活用も進んでいます)。
CIMは、国土交通省が推進するi-Constructionの旗印のもと、調査・設計・施工・維持管理というプロジェクトの全ライフサイクルを通じた生産性向上を強く意識しています。特に、ICT建機との連携による「施工の自動化・省人化」や、老朽化するインフラを効率的に管理するための「維持管理の高度化」が重要な目的とされています。
BIMとCIM、どちらを学ぶべき? 導入時のよくある疑問
建設業界への就職・転職を考えている方や、すでに関わっている方にとって、「自分はBIMとCIM、どちらを学ぶべきか」は切実な疑問でしょう。ここでは、学習の指針や導入に関する一般的な疑問に答えます。
基本は自分の専門分野に合わせる
最もシンプルで明確な答えは、「自分の専門分野に合わせる」ことです。
- 学習の指針
・ 建築分野(設計事務所、ゼネコンの建築部門、ハウスメーカーなど)を目指すなら、まずはBIMの知識とスキルが求められます。
・ 土木分野(建設コンサルタント、ゼネコンの土木部門、官公庁、インフラ管理会社など)を目指すなら、CIMの知識が必須となります。
まずは自身のキャリアパスが建築と土木のどちらにあるのかを明確にし、対応する技術の習得を目指すのが現実的です。
両方の知識が必要になるケースとは?
近年、建築と土木が融合するような大規模プロジェクト(例:空港、大規模な駅ビル再開発、湾岸エリアの開発、大規模プラント建設など)も増えています。
このようなプロジェクトでは、土木(CIM)が作った広域の地形データの上に、建築(BIM)が作った建物のデータを配置して、全体の整合性を確認する必要があります。
また、BIMソフトとCIMソフトが連携する場面も出てきています。将来的にプロジェクトマネージャーや上位の技術者としてキャリアの幅を広げるためには、両者の基本的な概念を理解しておくことが望ましいでしょう。
導入コストや学習の難易度は?
BIMもCIMも、導入・学習には一定のコストがかかります。
1. ソフトウェアコスト
導入には専用のソフトウェアが必要です。これらは高機能なため、ライセンス費用が高額になりがちです。
2. ハードウェアコスト
複雑な3Dモデルを快適に扱うためには、高性能なグラフィックボードを搭載したハイスペックなPC(ワークステーション)が必要になります。
3. 学習コスト
従来の2D CADとは操作感や設計思想が大きく異なるため、習得には時間がかかります。専門のスクールや研修、独学での継続的な学習が必要です。
どちらが簡単ということは一概に言えませんが、扱う対象の特性(BIMの複雑な建築納まり vs CIMの広範囲な地形・線形データ)によって、習得すべきスキルや知識のポイントが異なります。
まとめ:BIMとCIMは対象分野と目的が異なるが、連携も進む
この記事では、BIMとCIMの違いについて、建築と土木の視点で整理しました。
・ BIMは主に「建築」分野で使われ、建物の設計・施工の効率化や品質確保に強みがあります。
・ CIMは主に「土木」分野で使われ、i-Constructionのもと、調査から維持管理までの全プロセスでの生産性向上を目指します。
・ 両者は対象分野、モデル化のスケール、主な目的が異なりますが、3Dモデルに情報を付加して活用するという基本理念は共通しています。
・ 国土交通省は両者を包含する「BIM/CIM」という用語を推進しており、今後は分野横断的なデータ活用や連携も進んでいくと予想されます。
まずはご自身の専門分野が建築か土木かを見極め、それに応じてBIMまたはCIMの理解を深めていくことが、これからの建設業界で活躍するための重要な第一歩となります。
BIMとCIMに関するよくある質問
Q. BIMとCIMは将来的に統一されますか?
A. 現状では、建築と土木で扱う対象物、必要な情報の種類、関連する法律や基準が大きく異なるため、ソフトウェアや手法が完全に「統一」される可能性は低いと考えられます。ただし、「BIM/CIM」という呼称の推進にも見られるように、データの連携や標準化(フォーマットの共通化など)は今後さらに進んでいくと予想されます。お互いの分野のデータをスムーズにやり取りできるようになることが期待されています。
Q. BIM/CIMで使われるソフトは同じですか?
A. 異なります。BIMでは建築設計に特化したソフト(例:Autodesk Revit, Graphisoft Archicadなど)が主流です。一方、CIMでは土木設計や地形の扱いに長けたソフト(例:Autodesk Civil 3D, 福井コンピュータ V-nasClairなど)や、各社独自のシステムが使われることが多いです。
Q. 個人でもBIMやCIMを学べますか?
A. 可能です。多くのソフトウェアベンダーが、機能制限版や学生版、無料の体験版を提供しています。また、オンライン学習教材(動画サイトや専門プラットフォーム)や、社会人向けの専門スクールも増えています。ただし、前述の通り、高機能なソフトを快適に動かすためには、ある程度のスペックを持つPCが必要になる場合があります。




