「BIM」の基本知識

BIMの基本知識とは?これだけは押さえたいポイント


更新日: 2025/10/22
BIMの基本知識とは?これだけは押さえたいポイント

この記事の要約

  • BIMとは建築情報のモデリング概念です
  • BIMはCADと異なり情報を一元管理します
  • BIMのメリット・デメリットと活用法を解説

対策キーワード:BIM

BIMとは?基本の「キ」をわかりやすく解説

「BIM(ビム)」という言葉を耳にする機会が増えましたが、具体的にどのようなものかご存知でしょうか。BIMは単なる3Dソフトではなく、設計から施工、維持管理に至るまでの建築プロセス全体を革新する概念です。ここでは、BIMの基本的な定義と、従来のCADとの違いについて、基本知識として解説します。

BIMの基本的な概念(Building Information Modeling)

BIMとは、Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の略称です。コンピューター上に現物と同じように建物の3Dモデル(BIMモデル)を作成し、そこにコスト、仕上げ、部材の仕様、管理情報など、建築に関するあらゆる「情報」を統合して活用する仕組みやワークフロー全体を指します。

BIMモデルの特徴

従来の3Dモデルが単なる「形状」のデータだったのに対し、BIMモデルは「情報」を持っています。例えば、モデル内の「壁」オブジェクトには、3D形状だけでなく、「材質はコンクリート」「耐火性能は2時間」「塗装仕上げの品番」「メーカー名」「価格」といった属性情報が紐付いているのが最大の特徴です。

従来のCAD(2D/3D)との根本的な違い

BIMとCADは、どちらも設計を支援するツールですが、その目的と機能は根本的に異なります。従来のCAD(Computer-Aided Design)は主に「図面(線や面)」を効率的に作成するためのツールでした。一方、BIMは「情報の詰まった3Dモデル(データベース)」を作成・管理するためのプラットフォームです。

この違いを理解するために、両者の特徴を比較します。

【BIMと従来のCADの比較表】

比較項目 従来のCAD(2D/3D) BIM (Building Information Modeling)
主な目的 図面の作成(線・面の集合体) 情報モデルの構築(情報の詰まったオブジェクト)
データの中心 図面(2D/3Dの形状データ) 3Dモデル+属性情報(データベース)
情報の連動性 低い(例:平面図を修正しても立面図は自動で変わらない) 高い(例:モデルで壁を動かせば、全図面・数量表が自動更新)
主な活用 設計・作図が中心 設計・施工・積算・維持管理など全プロセス
データの意味 線や面(例:「2本の線」) 部材(例:「幅910mm、高さ2400mmの壁」)

CADが「図面」の集合体であるのに対し、BIMは「単一のモデル(データベース)」であり、図面はそのモデルから切り出された「成果物の一つ」に過ぎない、という点が本質的な違いです。

BIMが持つ主な特徴と機能

BIMが「基本知識」として理解される上で欠かせない、その中核となる特徴や機能を紹介します。これらが組み合わさることで、BIMは従来の設計・施工プロセスを大きく変革する強力なツールとなります。単なる3D化ではなく、「情報連携」こそがBIMの本質です。

BIMモデルを中心に設計・施工・維持管理の担当者が連携しているイメージ

3次元モデルと「情報」の一元管理

BIMの最大の特徴は、すべての情報が単一のBIMモデル(データベース)で一元管理されることです。設計変更を行う場合、モデルの一箇所(例えば、ある部屋の壁)を修正すれば、その変更に関連する全ての平面図、立面図、断面図、さらには部材の数量表やパース図(完成予想図)まで、自動的に整合性が保たれた形で更新されます。

従来のCAD作業では、平面図の変更後、立面図や断面図、関連する詳細図もすべて手作業で修正する必要があり、修正漏れや図面間の不整合(不一致)が発生しがちでした。BIMは、この問題を根本的に解決します。

設計・施工・維持管理フェーズでの連携

BIMモデルに含まれる情報は、設計段階だけで完結しません。施工段階では、設計BIMモデルに施工用の情報を追加し(施工BIM)、施工計画のシミュレーションや製作図の作成に活用されます。さらに、竣工後は、そのモデルが建物の所有者や管理者に引き渡され、維持管理(ファシリティマネジメント)段階での修繕履歴や点検情報の管理にも活用できます。

このように、建築ライフサイクル全体(企画・設計・施工・維持管理)でデータを引き継ぎ、活用できるのがBIMの大きな強みです。

干渉チェック(整合性の確認)

BIMモデル上では、意匠(デザイン)、構造(骨組み)、設備(配管やダクト)など、異なる分野のデータを3D空間で重ね合わせて、物理的な干渉(ぶつかり)がないかを自動で検出できます。

例えば、「構造の梁(はり)と設備の大きなダクトが交差してしまっている」といった問題を、コンピューター上で明確に可視化できます。従来は各分野の2D図面を人間の目で重ねて確認していましたが、BIMにより、施工現場で発覚していた重大な手戻り要因を、設計段階で早期に発見・解決できます。

各種シミュレーション

BIMモデルには、形状情報だけでなく、部材の材質や性能といった属性情報が組み込まれています。これらの情報を活用し、設計の初期段階からさまざまなシミュレーションが可能です。

シミュレーションの例

環境シミュレーション: 日照シミュレーション、建物内の採光や通風の解析。
エネルギー解析: 壁や窓の断熱性能に基づいた、冷暖房負荷の計算(省エネ性能の評価)。
避難シミュレーション: 火災時などの避難経路が適切かどうかを検証。
コストシミュレーション: モデルから部材の数量を自動算出し、概算見積もりやコストの変動をリアルタイムで把握。

図面・数量表の自動生成

BIMモデルが完成すれば、そこから必要な図面(平面図、立面図、断面図など)や、部材の数量表(面積表、建具リスト、コンクリート体積など)を自動的に切り出して生成できます。

モデルデータが全ての情報の「正」であるため、図面や数量表は常に最新のモデル情報に基づいています。手作業による図面のトレースや、数量の拾い出し作業が大幅に削減され、ヒューマンエラーを防ぎ、作業効率を飛躍的に向上させます。

BIM導入で得られるメリットとは?

BIMを導入することは、設計者や施工者だけでなく、発注者(施主)も含めたプロジェクト全体に多くのメリットをもたらします。ここでは、BIMの活用によって期待できる主な利点を、関係者の視点も交えながら整理します。

BIM導入の主なメリット

設計品質の向上
3Dモデルによる視覚的な確認(ビジュアライゼーション)や、前述の干渉チェック機能により、設計ミスや不整合を早期に発見・修正できます。これにより、建物の品質そのものが向上します。

生産性の向上
図面作成や数量算出の自動化、修正作業の効率化により、設計・施工プロセス全体の生産性が向上します。特に、設計変更が発生した際の修正作業(手戻り)にかかる工数を劇的に削減できます。

コスト削減
設計段階での綿密なシミュレーションや問題解決により、施工現場での予期せぬトラブルや手戻り(やり直し)作業が減少します。これは、不要な人件費や材料費のロスを削減することに直結します。

工期短縮
現場での手戻りの減少や、BIMモデルを活用した施工計画のシミュレーション(施工ステップの可視化など)による作業の効率化が、プロジェクト全体の工期短縮に繋がります。

スムーズな合意形成
専門的な2D図面が読めない発注者や関係者に対しても、直感的に理解しやすい3Dモデルやパース図(完成予想図)、ウォークスルー動画などを共有できます。これにより、イメージの齟齬(そご)を防ぎ、迅速な意思決定(合意形成)を促します。

データ活用の拡大
竣工後もBIMモデルを「建物のデジタル台帳」として維持管理データ(修繕履歴、点検情報、備品管理など)として活用することで、建物のライフサイクル全体を通じた価値向上に貢献します。

知っておきたいBIM導入のデメリットと課題

多くのメリットがある一方で、BIM導入には初期段階で乗り越えるべき課題やデメリットも存在します。これらは導入を検討する読者の「よくある不安」でもあります。導入を成功させるためには、これらの課題も事前に理解しておくことが重要です。

BIM導入の主なデメリット・課題

高額な初期コスト
BIMソフトウェア本体のライセンス費用(サブスクリプション費用)が必要です。さらに、従来のPCよりも高性能なパソコン(ハイスペックなCPU、大容量メモリ、高性能グラフィックボード)やサーバー環境の整備といった、ハードウェアへの初期投資も必要になります。

学習・教育コスト
従来の2D CADとは操作感や設計思想(「線を描く」から「情報を入力する」へ)が根本的に異なります。そのため、操作方法の習得やBIMの概念を理解するための研修・教育に、相応の時間とコストがかかります。

運用ルールの策定
BIMのメリットを最大限に引き出すには、統一されたルールが不可欠です。「どの情報をどの程度までモデルに入力するか(LOD: Level of Development)」、「データの命名規則」、「ファイルの受け渡し方法」など、社内や協力会社との間でBIM運用の詳細なルールを明確に定める必要があります。

連携体制の構築
BIMはプロジェクト全体で情報共有してこそ真価を発揮します。自社だけがBIMを導入しても、取引先や協力会社(意匠、構造、設備、施工など)がBIMに対応していなければ、データの連携がスムーズにいかず、かえって作業が非効率になる可能性もあります。

モデリングの負荷
初期段階で多くの情報を入力する必要があるため、情報量が多い詳細なBIMモデルを作成するには、従来の2D作図に比べて作業時間と工数(モデリング負荷)が増加する場合があります。

BIMはいつ・どこで活用されるのか?

BIMの基本知識として、具体的にどのような分野やプロセスで活用されているのかを知っておきましょう。BIMはもはや特定の分野のものではなく、建設業界全体に広がりつつあります。(※特定の事例紹介ではなく、一般的な活用シーンです)

建築現場と土木(CIM)現場でBIM/CIMが活用されているシーン

建築(意匠・構造・設備)設計

BIMの最も基本的かつ中心的な活用シーンです。意匠(デザイン)、構造(骨組み)、設備(配管やダクト)の各設計分野が、BIMモデルを共有・連携しながら設計を進めます。
3Dでのデザイン検討、リアルタイムでの整合性チェック(干渉チェック)、各種シミュレーション(日照、エネルギーなど)、そして確認申請図面の作成などに活用されます。

施工(施工計画・製作図)

設計段階で作成されたBIMモデル(設計BIM)を、施工会社(ゼネコンなど)が引き継ぎます。施工会社は、このモデルに施工に必要な情報を追加(施工BIM)し、以下のような業務に活用します。

施工計画: 仮設足場の計画、クレーンの配置・動作シミュレーション。
製作図: 現場で実際に部材を製作・設置するための詳細な図面(施工図・製作図)の作成。
進捗管理: モデルと工程表を連携させ、工事の進捗状況を4D(3D+時間)で可視化。

維持管理・ファシリティマネジメント(FM)

竣工後、建物の所有者や管理会社がBIMモデルを引き継ぎます。このモデルは「建物のデジタルツイン(デジタルの双子)」として機能します。
修繕履歴、点検記録、機器の仕様書、保証書といった情報をモデルに紐付けて管理し、効率的な維持管理(ファシリティマネジメント)や、将来の改修・リノベーション計画に役立てます。

土木・インフラ分野(CIM/LIM)

BIMの概念は建築分野だけでなく、土木・インフラ分野にも急速に広がっています。日本ではCIM(シム:Construction Information Modeling/Management)と呼ばれ、道路、橋梁、ダム、トンネルなどの設計・施工・維持管理に活用されています。

国土交通省は、公共事業の生産性向上を目指し「BIM/CIM」の活用を強力に推進しています。また、都市計画や広域のインフラ管理ではLIM(Landscape Information Modeling)と呼ばれることもあります。

[出典:国土交通省「BIM/CIMポータルサイト」]

BIMを始めるために押さえたいポイント

BIMの基本知識を理解した上で、実際に導入や学習を検討する際に押さえておきたい「何から始めるか」「何が必要か」という実践的なポイントを解説します。

主なBIMソフトの種類と特徴

BIMを実現するためのソフトウェアは複数存在し、それぞれに特徴があります。導入目的や分野によって選択すべきソフトが異なります。代表的なソフトを知っておきましょう。

【主なBIMソフトウェアの比較表】

ソフトウェア名 主な特徴・強み 主な開発元
Revit (レビット) 意匠・構造・設備が統合されており、建築分野で世界的に高いシェアを持つ。 Autodesk
Archicad (アーキキャド) 意匠設計に強く、直感的な操作性が特徴。BIMソフトとしての歴史が長い。 GRAPHISOFT
GLOOBE (グローブ) 日本の建築基準法や設計実務(斜線制限など)に合わせた機能が豊富な国産BIMソフト。 福井コンピュータアーキテクト

BIM導入時に必要な準備(体制・環境)

BIMを導入する際は、単にソフトウェアを購入するだけでなく、以下の4つのステップで準備(必要なもの・体制)を整えることが成功の鍵となります。

BIM導入の準備ステップ
  1. STEP1: BIM導入目的の明確化
    (目的)まずは「何のためにBIMを導入するのか」を明確にします。「設計の効率化」「プレゼン品質の向上」「施工の手戻り削減」など、目的を具体化し社内で共有することが第一歩です。

  2. STEP2: 高性能なPC・環境の準備
    (必要なもの)BIMは3Dモデルと大量の情報を扱うため、従来のCAD用PCよりも高いスペック(高性能CPU、大容量メモリ、専用グラフィックボード)を持つPCが必要です。必要に応じてサーバー環境も見直します。

  3. STEP3: 専任チーム・担当者の配置
    (体制)BIMの推進や社内教育、ルール作りを担当する中心的なチームや担当者(BIMマネージャーなど)を決定します。推進役がいないと、導入が形骸化する可能性があります。

  4. STEP4: 社内・社外ルールの整備
    (体制)BIMの運用ルールを整備します。特に「モデリングの詳細度(LOD)をどこまでにするか」「データの命名規則」「協力会社とのデータ受け渡し方法」などを具体的に定めることが重要です。

初心者向けの学習方法

BIMを効率的に学ぶには、独学と外部サービスを組み合わせるのがおすすめです。以下の4つのステップで進めると良いでしょう。

BIMの学習ステップ
  1. STEP1: 書籍・Webサイトで概念を理解する
    まずは書籍やメーカー公式サイト、専門ブログなどで、BIMの概念や従来のCADとの思想の違いを独学でインプットします。

  2. STEP2: BIMソフトの体験版を操作する
    多くのBIMソフトには無料体験版(例:Revit 30日間無料体験版など)が用意されています。テキストを読むだけでなく、実際にソフトを操作して、どのようなことができるのかを体感します。

  3. STEP3: セミナー・講習会・eラーニングで体系的に学ぶ
    ソフトウェアの販売代理店や専門スクールが開催する有料・無料のセミナーやハンズオン講習会に参加します。近年はオンライン動画教材(eラーニング)も充実しており、自分のペースで体系的に操作方法を学べます。

  4. STEP4: 小規模なプロジェクトで実践する
    知識をインプットしたら、実際の小規模なプロジェクトや架空の課題で、モデリングから図面化までの一連の流れを実践してみることが、スキル定着の一番の近道です。

まとめ:BIMは建設業界の未来を支える中核技術

この記事では、BIMの基本知識として、その概念、CADとの違い、主な特徴、メリット・デメリット、そして具体的な活用シーンや導入のポイントについて網羅的に解説しました。

BIMの基本知識 まとめ

BIMは単なる3D作図ツールではなく、建築物のライフサイクル全体にわたる「情報」を一元管理し、活用するためのプラットフォームであり、ワークフローそのものの変革を促す概念です。

導入には初期コストや学習といったハードルもありますが、設計品質の向上、生産性向上、関係者間のスムーズな合意形成など、計り知れないメリットをもたらします。

建設業界の人手不足や働き方改革、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が社会的な課題となる中、BIMはこれらの課題を解決し、業界全体の未来を支える中核技術と言えるでしょう。まずはBIMの基本を正しく押さえ、その可能性を探る第一歩としてください。

BIMに関するよくある質問

BIMの基本知識に関連して、読者から寄せられることの多い質問にお答えします。

Q:BIMオペレーターとはどんな仕事ですか?

A: BIMオペレーターとは、BIMソフト(RevitやArchicadなど)を専門に操作する職種です。主な仕事内容は、設計者の指示に基づき、3Dモデルの作成や修正、属性情報の入力、図面の切り出し、数量表の作成などです。正確なモデリングスキルとBIMソフトの高度な操作知識が求められます。

Q:BIMとCIMの違いは何ですか?

A: 基本的な概念(3次元モデルと情報の一元管理)は同じですが、対象とする分野が異なります。
BIM (Building Information Modeling): 主に「建築物」(ビル、住宅、商業施設など)を対象とします。
CIM (Construction Information Modeling/Management): 主に「土木・インフラ」(道路、橋梁、ダム、トンネルなど)を対象とします。

日本では国土交通省が推進しており、現在では「BIM/CIM」と併記されることが一般的です。

Q:小規模な事務所でもBIMは導入できますか?

A: 導入可能です。かつては高価で大規模プロジェクト向けとされがちでしたが、近年はソフトウェアのサブスクリプション化(月額・年額払い)が進み、初期費用を抑えられるようになりました。また、比較的安価なBIMソフトも登場しており、小規模な設計事務所や工務店での導入事例も増えています。
ただし、学習コストや運用ルールの策定といった課題は規模に関わらず発生するため、まずは「スモールスタート」(小規模なプロジェクトで試してみる、特定の業務だけBIM化するなど)から始めるのが現実的です。

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