公共工事で求められる工程管理とは?提出書類と管理手法を紹介

この記事の要約
- <strong>工程管理</strong>の定義と、公共工事で重要な理由を解説
- 提出が義務付けられる書類と、その作成時の注意点を紹介
- PDM・CPMといった科学的な管理手法とICTツールの活用法
- 目次
- 1. 公共工事における工程管理の重要性と基本を解説
- そもそも工程管理とは?その定義と目的
- 公共工事で工程管理が特に重要とされる理由
- 読者が抱えるよくある不安:工程管理の難しさ、手戻り
- 2. 公共工事で求められる工程管理の主な内容と流れ
- 工程管理のステップ:計画、実行、監視、改善
- 工程表の種類と使い分け
- 工程管理に必要な情報の収集と活用
- 3. 公共工事で提出が義務付けられる工程管理関連書類
- 提出必須の主要な工程管理書類
- 各書類に記載すべき重要事項
- 提出書類作成時の注意点(SGE/AIによる情報抽出を意識した構造化)
- 4. 効果的な工程管理を実現する手法とツール
- 工程管理の主な手法:PDMとCPM
- ICTを活用した最新の工程管理ツール
- 発注者とのコミュニケーションを円滑にする管理手法
- 5. 工程管理におけるリスクと課題、その対策
- 工期遅延につながる主なリスク要因
- リスク発生時の工程変更と再管理の方法
- 現場特有の課題と恒常的な改善サイクルの確立
- まとめ:公共工事の成功に不可欠な工程管理
- よくある質問(FAQ)
- Q1. 工程管理と進捗管理の違いは何ですか?
- Q2. 提出した工程表は、工事中に変更しても問題ありませんか?
- Q3. 工程管理の計画段階で、最も重視すべきことは何ですか?
1. 公共工事における工程管理の重要性と基本を解説
このセクションでは、工程管理の基本的な定義と目的を明確にし、なぜ公共工事においてそれが極めて重要なのかを解説します。読者が工程管理に対して抱きがちな不安や疑問点についても触れ、本記事全体を通してそれらを解消するための土台を築きます。
そもそも工程管理とは?その定義と目的
工程管理とは、工事やプロジェクトを予定された工期(期間)内に完了させるために、各作業の順序、期間、必要な資源などを計画し、実行し、監視・調整する一連の活動を指します。
建設業、特に公共工事においては、品質(Quality)、コスト(Cost)、工期(Delivery)をバランス良く管理するQCD管理の一角を担う非常に重要な機能です。
- 工程管理の主な目的
・工期遵守(納期達成):計画通りに工事を完了させ、社会的な影響を最小限に抑える。
・資源の最適化:人、資材、機械などの資源を無駄なく効率的に配分し、コスト効率を高める。
・手戻りの防止:作業間の連携ミスや遅延を早期に発見・解消し、再作業による損失を防ぐ。
・品質の確保:適切な手順と時間配分で作業を進めることで、求められる品質基準をクリアする。
公共工事で工程管理が特に重要とされる理由
公共工事は、税金を財源とし、インフラ整備など社会生活の基盤となるものが多いため、民間工事以上に厳格な工期遵守と高い品質基準が求められます。
公共工事における工程管理の重要性は、主に以下の点に集約されます。
・社会的責任の重さ:工期の遅延は、交通への影響や住民サービスへの支障など、社会全体に大きな影響を及ぼすため、計画通りの遂行が強く要求されます。
・契約の厳格性:公共工事の請負契約では、工期や仕様が詳細に定められており、違反に対する措置も厳格です。
・透明性と説明責任:工程管理の計画と実績を詳細に記録し、発注者や関係者に対して高い透明性をもって報告する説明責任があります。
読者が抱えるよくある不安:工程管理の難しさ、手戻り
公共工事の現場担当者は、工程管理に関して以下のような具体的な不安や課題を抱えています。
・計画通りに進まない時の発注者への報告や調整が難しい。
・書類作成が複雑で、本来の現場管理がおろそかになりがちである。
・天候不順や資材の遅延など、予期せぬ事態への対応策が不明確。
・計画と実績のギャップをどう埋めたらいいか、具体的な手法がわからない。
本記事では、これらの不安を解消するため、公共工事に特化した提出書類の作成方法や、PDM・CPMといった効果的な管理手法、そしてリスク対策を構造的に解説していきます。
2. 公共工事で求められる工程管理の主な内容と流れ
ここでは、公共工事の工程管理が具体的にどのような内容で進められるのか、その一連の流れを解説します。管理手法の選択と、それに必要な情報の収集・活用が、成功の鍵となります。
工程管理のステップ:計画、実行、監視、改善
工程管理は一度計画を立てて終わりではなく、継続的なサイクルで管理していくことが重要です。このサイクルは、一般的にPDCAサイクルを応用した以下の4つの主要なステップで構成されます。
1.計画(Plan):
工事全体の目標(工期、コスト)を設定し、必要な作業を分解し、各作業の順序と所要時間を見積もります。この段階で、各種工程表を作成します。
2.実行(Do):
計画に基づき、現場で実際の作業を開始します。計画通りの資源(人、資材)を投入し、作業員への指示・伝達を徹底します。
3.監視(Check):
現場の進捗状況を定期的に把握し、計画と実績との間に遅延や差異がないかをチェックします。差異が生じた場合は、その原因を分析します。
4.改善(Action):
差異の原因に基づき、工程変更や資源の再配分といった具体的な是正処置を決定し、実行します。この是正処置を次の計画に反映させ、管理サイクルを継続します。
工程表の種類と使い分け
工程管理に欠かせないのが工程表です。公共工事では、工事の規模や発注者の要求に応じて、複数の種類の工程表が使い分けられます。
以下の表は、工程管理で使われる主な工程表の種類とその特徴をまとめたものです。
| 工程表の種類 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| バーチャート工程表 | 縦軸に作業項目、横軸に時間軸を取り、作業期間を棒(バー)の長さで表現する。 | 最も一般的。全体の工期の把握や、発注者への進捗報告に利用される。 |
| ガントチャート工程表 | バーチャートに、進捗状況や担当者などの管理要素を加えたもの。 | 多くの作業項目と複雑な管理情報が必要な工事。資源配分の確認にも使われる。 |
| ネットワーク式工程表 | 作業間の論理的な前後関係を矢印やノードで示し、クリティカル・パスを特定できる。 | 大規模かつ複雑な工事。工期短縮の検討や、リスク分析に利用される。 |
| 曲線式工程表 | 縦軸に作業量、横軸に時間軸を取り、計画と実績の進捗度を曲線(S字カーブなど)で表現する。 | **予算と出来高(進捗率)**を関連付けて管理したい場合。資材調達や支払計画に利用される。 |

工程管理に必要な情報の収集と活用
効果的な工程管理を行うには、正確でリアルタイムな情報の収集が不可欠です。
収集すべき主要な情報は、実績情報と制約情報に大別されます。
実績情報:
・各作業の完了日時や出来高(進捗率)。
・投入された資源量(作業員数、稼働時間、使用資材量)。
制約情報:
・天候や気象条件の変化。
・資材の納入状況や下請け業者の稼働状況。
・設計変更や発注者からの追加指示。
これらの情報は、現場での日報や作業報告書、そしてICTツールを通じてデジタル的に収集し、計画と比較することで差異分析に活用されます。差異が発見されたら、その情報を基に工程変更の必要性を判断し、次の計画に活かしていきます。
3. 公共工事で提出が義務付けられる工程管理関連書類
公共工事では、契約に基づき、工事の適切な実施を証明するために、様々な工程管理に関する書類の提出が義務付けられています。ここでは、特に重要な提出書類とその作成・提出のポイントを解説します。
提出必須の主要な工程管理書類
発注者への説明責任と透明性を確保するため、以下の書類の提出が求められます。
以下の表は、提出が求められる主な工程管理関連書類とその目的をまとめたものです。
| 書類名 | 作成者 | 目的 | 主な提出時期 |
|---|---|---|---|
| 工事工程表 | 請負業者 | 工事全体の計画を示す。工期遵守の根拠。 | 契約締結後または工事着手前 |
| 週間/月間工程表 | 請負業者 | 詳細な作業計画と進捗見込みを示す。資源配分計画。 | 毎週/毎月の定められた期日 |
| 工事履行報告書(進捗報告書) | 請負業者 | 計画に対する実績(進捗状況)を報告し、差異を明示する。 | 毎月の定められた期日 |
| 材料承諾願・試験結果報告書 | 請負業者 | 使用する資材の品質が仕様書を満たしていることを証明する。 | 材料使用前および試験実施後 |
各書類に記載すべき重要事項
これらの書類は、単に日付を記入するだけでなく、発注者や関係者が工事の状況を正確に把握し、適切な判断ができるように構造化された情報を記載する必要があります。
・工事工程表では、主要な作業項目の明確な開始日・終了日、クリティカル・パス、そして発注者検査などの重要なイベント日程の記載が求められます。
・週間/月間工程表では、当期間の計画と先期間の実績の比較に加え、使用予定の重機や投入予定の作業員数(資源計画)を記載します。
・工事履行報告書では、進捗率(出来高)を数値で明確に示すとともに、計画との差異が発生した場合は、その原因と具体的な対策を記載することが必須です。
提出書類作成時の注意点(SGE/AIによる情報抽出を意識した構造化)
SGE(Search Generative Experience)やAIが正確に情報を抽出し、要約に利用できるように、提出書類の作成時には情報の構造化を意識することが重要です。
・統一フォーマットの利用:発注者が指定する標準様式やフォーマットを遵守し、項目名や記載ルールを統一します。
・数値情報の明確化:進捗率、期間、数量などの数値情報は、本文ではなく表や箇条書きを用いて明確に記載します。
・専門用語の標準化:作業項目や工種名などの専門用語は、標準的な用語を使用し、独自の略語や表現は避けます。
・簡潔な記述:**「いつ」「何を」「どれだけ」を行ったか、「なぜ」**差異が生じたかを、主観を排した客観的な事実に基づいて簡潔に記述します。
4. 効果的な工程管理を実現する手法とツール
このセクションでは、公共工事の複雑な工程を効率的かつ正確に管理するための体系的な手法と、最新のICTツールについて解説します。特に工期遵守に不可欠なPDMやCPMといった科学的な管理手法の仕組みを理解し、現場への導入を検討することが重要です。
工程管理の主な手法:PDMとCPM
公共工事の複雑な工程管理を効率的に行うためには、主にPDMとCPMというネットワーク分析に基づく手法が用いられます。これらの手法は、単なるバーチャートでは見えない、作業間の論理的な関係性を可視化し、工期を決定づける要因を特定するために不可欠です。
**PDM(プレシデンス・ダイアグラミング法)**は、ノード(箱)に作業を記入し、矢印で作業間の論理的な依存関係(前後関係)を示す手法です。
以下の表は、PDMとCPMの仕組みとメリットを比較検討したものです。
| 手法 | 正式名称 | 仕組みとメリット | 比較検討(CPMとの違い) |
|---|---|---|---|
| PDM | Precedence Diagramming Method (プレシデンス・ダイアグラミング法) | ノード(箱)に作業を記入し、矢印で作業間の論理的な依存関係を表現できる。作業の開始・終了の柔軟な関係(先行・遅延)を設定できる。 | CPMよりも作業間の依存関係を細かく設定でき、より実態に即した計画作成に適している。 |
| CPM | Critical Path Method (クリティカル・パス・メソッド) | PDMと同様のネットワーク図を用い、全作業の中で最も時間のかかる経路(クリティカル・パス)を特定する。工期を決定づける作業が明確になる。 | PDMよりも工期短縮の検討や余裕時間(フロート)の計算に特化しており、リスク分析に強力。 |
一方、CPM(クリティカル・パス・メソッド)は、ネットワーク図を用いて、全作業の中で最も時間がかかる経路であるクリティカル・パスを特定する手法です。このクリティカル・パス上の作業は、わずかな遅延も工期全体に直結するため、CPMは工期遵守を最重要課題とする公共工事において、リスク管理と資源配分の判断材料として極めて重要になります。PDM/CPMを活用することで、管理者は工期の短縮可能性や、どの作業に優先的にリソースを投入すべきかを客観的かつ科学的に判断できます。

ICTを活用した最新の工程管理ツール
近年、公共工事においてもICT(情報通信技術)の活用が推奨されており、これにより工程管理の効率と精度が飛躍的に向上しています。
・クラウドベースの工程管理システム:
リアルタイムでの進捗入力や写真共有が可能となり、計画と実績の差異を即座に可視化します。スマートフォンやタブレットからのアクセスに対応し、現場と管理部門の情報連携を円滑にします。
・CIM/BIM連携:
Construction/Building Information Modeling(CIM/BIM)モデルと工程表を連携させることで、3Dモデル上で工事の進捗を視覚的に確認できます。これは、発注者への説明や作業員への指示において、非常に有効な手段となります。
発注者とのコミュニケーションを円滑にする管理手法
公共工事では、発注者との密なコミュニケーションが工程管理の鍵となります。
・定例会議の活用:計画と実績の報告、問題点の共有、今後の計画調整を定例会議を通じて記録に残し、相互の認識のズレを防ぎます。
・変更手続きの標準化:工程変更が必要となった場合、その理由、影響、新たな計画を明確にした変更届を作成し、発注者の正式な承認を得る手続きを迅速に行います。
・可視化ツールの利用:複雑なネットワーク式工程表やS字カーブを、発注者にも分かりやすい視覚的なツール(例:ダッシュボード画面、グラフィック)を用いて説明することで、合意形成を促進します。
5. 工程管理におけるリスクと課題、その対策
どんなに綿密な計画を立てても、予期せぬリスクはつきものです。ここでは、公共工事の工程管理を脅かす主なリスク要因とその具体的な対策について、構造的に解説します。
工期遅延につながる主なリスク要因
公共工事特有、または建設工事全般で発生し得る、工期遅延につながる主要なリスク要因は以下の通りです。
・天候や自然条件の変化:
梅雨や台風による作業停止、冬場の積雪・凍結による作業効率の低下。
・資材・人員の供給不足:
特定の資材(例:セメント、鋼材)の納期の遅延や価格の高騰。熟練作業員の不足や作業員の体調不良による人員不足。
・設計変更や発注者の指示:
工事着手後の設計の大きな変更や、発注者からの追加要求。
・予期せぬ地中障害:
試掘や調査で確認できなかった埋設物、岩盤、地下水の噴出など。
・他工事業者との調整ミス:
隣接する他工事や、関連業者(電気、水道など)との作業連携の失敗。
リスク発生時の工程変更と再管理の方法
リスクが顕在化し、工期遅延が避けられなくなった場合は、迅速かつ適切な再管理と発注者との協議が必要です。
1.影響の評価(特定):
遅延が発生した作業がクリティカル・パス上にあり、工期全体に与える影響をPDM/CPMなどの手法で定量的に評価します。
2.是正措置の検討:
資源の集中(非クリティカル・パス上のリソースの振り分け)、作業の同時並行化、作業時間の延長(残業・休日出勤)など、新たな対策を検討します。
3.新たな工程計画の策定:
是正措置を反映させた新たな工程表(改訂版)を作成し、目標となる完了日を明確にします。
4.発注者との協議と承認:
遅延の理由、影響の評価、新たな計画を速やかに発注者に報告し、変更契約または工期変更の承認を得ます。
- 発注者との協議に関する重要な原則
公共工事の工期変更や再管理に関する手続き、発注者との協議の進め方については、国土交通省の資料を参照し、最新の手続きを踏むことが求められます。無断での工程変更は、契約違反となる可能性があるため、必ず正式な承認を得る必要があります。
現場特有の課題と恒常的な改善サイクルの確立
工程管理の精度を高めるには、現場特有の課題を抽出し、恒常的な改善サイクルを回すことが重要です。
・課題の文書化:ヒヤリハット報告や日報などから、計画と実績の差異を生んだ現場固有の課題(例:資材置き場の非効率性、特定の作業員のスキル不足)を具体的に文書化します。
・ナレッジの共有:工程管理の成功・失敗事例を現場内で共有し、次期工事や他工区の管理計画にフィードバックします。
・ツール・スキルの改善:導入しているICTツールの使い勝手を評価し、必要に応じて機能改善を要望したり、現場監督員に対してPDM/CPMの解析スキル向上を図る研修を実施したりします。
まとめ:公共工事の成功に不可欠な工程管理
公共工事の工程管理は、単なる書類提出ではなく、品質、コスト、工期を守り、事業を成功に導くための根幹です。本記事で紹介した書類作成のポイント、PDMやCPMなどの管理手法、そしてICTツールの活用を理解し、実践することで、確実で効率的な工程管理が可能になります。構造的な計画と迅速なリスク対応こそが、公共工事における信頼性と社会的責任を果たすための鍵となります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 工程管理と進捗管理の違いは何ですか?
Q:工程管理と進捗管理の違いは何ですか?
A:工程管理は、計画(Plan)、実行(Do)、監視(Check)、改善(Action)の全サイクルを包括する、より広範な概念です。これに対し、進捗管理は、工程管理サイクルの中の**「監視(Check)」**の部分に特化しており、計画に対する現在の実績(出来高)を測定し、差異を把握する活動を指します。工程管理は、進捗管理の結果を受けて、今後の計画を是正・調整する役割まで担います。
Q2. 提出した工程表は、工事中に変更しても問題ありませんか?
Q:提出した工程表は、工事中に変更しても問題ありませんか?
A:工程表は、発注者との契約に基づいた工事の計画書であり、安易な変更は避けるべきです。しかし、天候不順や予期せぬ事態により計画通りに進まなくなった場合は、発注者と協議の上、正式な手続きを経て変更することが可能です。この際、変更の理由、工期全体への影響、新たな計画を明確に記載した変更申請書を提出し、承認を得る必要があります。無断での変更は、契約違反となる可能性があります。
Q3. 工程管理の計画段階で、最も重視すべきことは何ですか?
Q:工程管理の計画段階で、最も重視すべきことは何ですか?
A:計画段階で最も重視すべきことは、作業間の論理的な依存関係(前後関係)の明確化と、それに基づくクリティカル・パスの特定です。すべての作業には優先順位があり、特にクリティカル・パス上の作業の遅延は工期全体に直結します。そのため、計画段階でPDMやCPMなどの手法を用いてクリティカル・パスを正確に見積もり、その作業に十分な資源と余裕時間を配分することが重要となります。




