「サステナビリティ」の基本知識

建設資材の環境負荷を減らす工夫とは?実践的な3つの方法


更新日: 2025/11/04
建設資材の環境負荷を減らす工夫とは?実践的な3つの方法

この記事の要約

  • 建設資材の環境負荷を減らす3つの実践方法を解説
  • コストや難易度を比較し自社に合う選び方がわかる
  • サステナビリティ経営における資材選定の重要性を紹介

建設業界におけるサステナビリティの重要性となぜ今、環境負荷削減が求められるのか

建設業界は、社会基盤を支える重要産業ですが、同時に大量の資源消費、建設・解体時の廃棄物問題、製造・運搬時のCO2排出など、環境への影響も大きいと指摘されています。近年、世界的にサステナビリティ(持続可能性)への関心が高まる中、建設業界においても環境負荷削減は経営上の重要課題となっています。投資家によるESG投資の拡大、環境配慮を求める消費者の意識向上、国内外での環境規制強化が、この動きを後押ししています。

読者のよくある不安:「何から始めればいい?」「コストは?」

サステナビリティの重要性は認識しつつも、「具体的に何から手をつければいいのか」「環境配慮型資材はコストが上がるのではないか」「専門知識がないと難しいのでは?」といった不安や疑問を持つ担当者も少なくありません。また、「かけたコストに見合う効果が本当に出るのか」という費用対効果への懸念が、具体的な行動をためらわせる要因にもなっています。

環境負荷削減の方法について真剣に考える建設現場の担当者

この記事では、そうした不安を解消し、建設現場における環境負荷削減の「実践的な第一歩」を踏み出すためのヒントを提供します。特に影響の大きい「建設資材」に焦点を当て、環境負荷を減らすための具体的な3つの方法を、それぞれの特徴とともにわかりやすく解説します。

建設資材の環境負荷を減らす実践的な3つの方法

建設資材の環境負荷を減らすアプローチは多岐にわたりますが、本章では特に効果的かつ実践的な3つの方法を紹介します。それは「環境配慮型資材(グリーン建材)の採用」「資材のライフサイクル全体(LCA)での選定」「調達・運搬・廃棄プロセスの最適化」です。これらは、資材そのものの見直しから、その「扱い方」の工夫までを網羅しています。

方法1:環境配慮型資材(グリーン建材)の積極的な採用

最も直接的な方法の一つが、環境配慮型資材(グリーン建材)の積極的な採用です。これは、従来の資材と比較して、製造から廃棄に至る過程での環境負荷が少ない資材の総称です。これらの採用は、資源枯渇の防止、CO2排出削減、廃棄物削減に直結します。

主なグリーン建材の種類

リサイクル資材
 例:コンクリート塊から作る「再生骨材」、廃木材や廃プラスチックから作る「再生木材」、廃ガラスから作る「再生断熱材」など。廃棄物の削減と資源の有効活用に貢献します。
低環境負荷・天然素材
 例:適切に管理された森林からの「間伐材」、成長の早い「竹材」、揮発性有機化合物(VOC)の放出が少ない「低VOC塗料・接着剤」、自然由来の「天然系断熱材」など。製造時のエネルギー消費が少なく、人や生態系への影響も抑えられます。
各種認証取得資材
 例:「FSC認証(適切に管理された森林からの木材製品)」、「エコマーク(製造から廃棄までの環境負荷が考慮された製品)」、「カーボンフットプリント(製品のCO2排出量を見える化した製品)」など。第三者機関による客観的な評価基準を満たしている証となります。

これらの資材を選ぶことは、建物の環境性能を高めるだけでなく、企業のサステナビリティへの姿勢を具体的に示すことにも繋がります。

[出典:環境省 グリーン購入法]
[出典:国土交通省 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律]

方法2:資材のライフサイクル全体(LCA)を考慮した選定

次に重要なのが、資材の「ライフサイクル全体」を考慮して選定する視点、すなわちLCA(ライフサイクルアセスメント)です。LCAとは、製品やサービスがその一生を通じて環境にどれだけの影響を与えるかを、科学的、定量的、客観的に評価する手法です。

建設資材におけるライフサイクルは、一般的に以下のステージで構成されます。

資源採掘・製造段階:原料の採掘や加工、製品の製造
輸送段階:工場から建設現場までの輸送
施工(使用)段階:建設時の施工、および建物使用中のメンテナンス
廃棄段階:建物の解体時に発生する廃棄物の処理(焼却・埋立)
リサイクル段階:廃棄された資材の再資源化

LCAの視点では、これらの各段階で消費される資源やエネルギー、排出されるCO2などの環境負荷物質を総合的に評価します。

例えば、製造時のCO2排出量が少なくても、遠隔地から長時間かけて輸送すれば、トータルの環境負荷は大きくなる可能性があります。LCAの視点を持つことで、製造時の負荷だけでなく、輸送距離(地産地消の重要性)や、耐久性(長寿命化)リサイクル性(廃棄時の負荷軽減)までを総合的に評価できます。目先のコストや単一の性能だけでなく、トータルでの環境負荷を最小化する資材選定が、真のサステナビリティ実現には不可欠です。

[出典:経済産業省 LCAインパクト評価手法等に関する調査研究報告書]
[出典:環境省 環境影響評価情報支援ネットワーク LCA(ライフサイクルアセスメント)とは]

方法3:調達・運搬プロセスの最適化と廃棄物の削減(3Rの徹底)

資材そのものを見直すだけでなく、「資材の扱い方」を工夫することも環境負荷削減の重要な柱です。これは、日々の業務プロセスの中で実践できる取り組みです。

調達・運搬・廃棄の具体的な工夫

調達・運搬の工夫
 - ジャストインタイム調達:必要な資材を必要な時に必要な量だけ納入し、過剰在庫による資材の劣化や無駄を防ぎます。
 - 地産地消:現場近くから資材を調達し、輸送にかかるCO2排出量とコストを削減します。
 - 運搬の効率化:共同配送や積載率の向上を図ります。
廃棄物の削減(3Rの徹底)
 - リデュース(Reduce:発生抑制):「プレカット資材」の導入により、現場での端材(ごみ)の発生を最小限に抑えます。
 - リユース(Reuse:再使用):仮設材(足場や型枠など)を繰り返し使用する、既存の建具を転用するなど、資材を捨てずに再使用します。
 - リサイクル(Recycle:再生利用):「建設リサイクル法」に基づき、現場での廃棄物分別を徹底し、再資源化率を向上させます。

これらの取り組みは、環境負荷を減らすと同時に、無駄な資材コストや廃棄物処理コストの削減にも直結するため、経営効率の改善にも貢献します。

[出典:国土交通省 建設リサイクル法の概要]
[出典:環境省 建設リサイクル法について]

【比較】環境負荷を減らす方法のメリット・デメリットと選び方

紹介した3つの実践的な方法は、それぞれ特徴が異なります。自社の状況やプロジェクトの特性に合わせ、どの方法から着手すべきか、あるいはどう組み合わせるかを判断することが重要です。ここでは、コストや導入難易度の観点から3つの方法を比較検討します。

数種類の建設資材サンプルを比較検討する作業員

3つの方法の比較(コスト・導入難易度・効果)

以下の表は、3つの方法の主な特徴を比較したものです。自社で取り組む際の優先順位付けの参考にしてください。

表:環境負荷を減らす3つの方法の比較

比較項目 方法1:環境配慮型資材の採用 方法2:LCAを考慮した選定 方法3:調達・運搬・廃棄の最適化
主な内容 リサイクル材、低VOC材、認証材などを使う 製造~廃棄までの総環境負荷で資材を選ぶ 輸送距離短縮、現場の3R、過剰在庫の削減
導入コスト 高め
(資材単価が上がることが多い)

(分析・選定にコストがかかる場合あり)
低~中
(プロセス見直しで対応可能)
導入難易度 低~中
(対応製品を選ぶだけの場合も)

(専門知識やLCAデータの入手が必要)

(現場の意識改革や取引先との調整が必要)
期待される効果 中~高
(特に使用段階・廃棄段階)

(ライフサイクル全体での最適化が可能)

(運搬・廃棄時のCO2削減効果大)

自社の状況に合わせた最適な工夫の選び方

上記の比較表を踏まえ、自社の状況に合わせた最適なアプローチを選びましょう。

コストを抑えて、まずできることから始めたい場合
 「方法3:調達・運搬・廃棄の最適化」が最も着手しやすい選択肢です。現場での分別徹底や運搬ルートの見直しは、初期コストを抑えつつ、廃棄物処理コストや燃料費の削減といった直接的な経済メリットにも繋がりやすいです。

専門知識はまだないが、一定の環境貢献をしたい場合
 「方法1:環境配慮型資材の採用」が適しています。特に「エコマーク」や「FSC認証」などの認証取得資材を選ぶことは、LCAのような複雑な分析を自社で行わなくても、一定の環境基準を満たした資材を導入できます。

長期的な視点で、本格的にサステナビリティに取り組みたい場合
 「方法2:LCAを考慮した選定」に挑戦する価値があります。導入難易度は高いですが、サプライチェーン全体での環境負荷を可視化・最適化できるため、最も本質的な削減効果が期待できます。方法1や方法3と組み合わせることで、その効果はさらに高まります。

重要なのは、これら3つを排他的に捉えるのではなく、自社の規模や体力、取引先との関係性に応じて、可能なものから組み合わせて実践していくことです。

建設資材の工夫がもたらすサステナビリティへの長期的貢献

建設資材の環境負荷を減らす工夫は、単に環境に優しいという側面に留まりません。これらの取り組みは、企業の持続可能性(サステナビリティ)そのものに直結し、中長期的な企業価値の向上に大きく貢献します。短期的なコスト増を懸念する声もありますが、それを上回る多様なメリットが存在します。

環境負荷削減が企業価値(ESG評価)を高める理由

近年、投資家は企業の財務情報だけでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを評価して投資先を選定する「ESG投資」を急速に拡大させています。建設業界においても、環境負荷削減への具体的な取り組みは、このESG評価を高める上で極めて重要な要素です。

Environment(環境):グリーン建材の採用や3Rの徹底は、CO2排出削減や資源循環への貢献として直接的に評価されます。
Social(社会):低VOC塗料の使用は、労働者や居住者の健康配慮(安全衛生)に繋がります。また、地域の間伐材利用は、地域社会への貢献とも評価されます。
Governance(ガバナンス):環境負荷を管理する体制(サプライチェーン管理)を構築・開示することは、透明性の高い企業統治の証となります。

ESG評価が高まることで、金融機関からの融資(サステナビリティ・リンク・ローンなど)を有利な条件で受けられたり、公共事業の入札時に加点されたりするメリットが期待できます。さらに、環境意識の高い優秀な人材の確保や、消費者・取引先からの信頼獲得にも繋がり、企業の競争力を根本から強化します。

将来的な規制動向と今から備える重要性

世界的に脱炭素化の流れが加速する中、各国政府は環境規制を年々強化しています。日本においても、「炭素税(カーボンプライシング)」の本格導入や「排出量取引制度」の議論が進んでいます。

これらの規制が導入されれば、CO2排出量が多い従来の資材を使い続けることは、将来的に大きなコスト負担(税金や排出枠購入費)として経営に跳ね返ってくることになります。

つまり、今から建設資材の環境負荷削減に取り組むことは、単なる社会貢献ではなく、将来的な規制対応コストの増加リスクを回避するための「未来への投資」でもあります。環境変化に迅速に対応できる企業体質を構築しておくことが、長期的なサステナビリティの確保に不可欠です。

まとめ:建設資材の環境負荷削減はサステナビリティ経営の第一歩

建設業界におけるサステナビリティの追求は、もはやオプションではなく、企業が存続し成長するための必須条件です。その中でも、建設資材の選定と管理は、環境負荷に大きな影響を与える重要な要素です。

この記事のまとめ

・ 建設業界において、資材の環境負荷削減は「サステナビリティ」の観点から急務である。
・ 実践的な方法は「環境配慮型資材の採用」「LCAでの選定」「調達・廃棄プロセスの最適化」の3つ。
・ これらはコストや難易度が異なるため、自社の状況に合わせて選択・組み合わせることが重要。
・ 目先のコストだけでなく、ESG評価や将来的な規制対応といった長期的メリットも大きい。

環境負荷削減の取り組みは、壮大な目標に感じられるかもしれませんが、まずは自社でできる小さな工夫から始めることが大切です。この記事で紹介した3つの方法をヒントに、持続可能な未来に向けた第一歩を踏出してください。

建設資材の環境負荷に関するよくある質問

建設資材の環境負荷削減に関して、特に多く寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q. 中小企業でも取り組めることはありますか?

A. はい、取り組めます。まずは「方法3:調達・運搬・廃棄の最適化」から始めるのがおすすめです。現場での廃棄物分別の徹底や、輸送効率の見直し(地元の資材店からの調達を優先するなど)は、比較的低コストで着手できます。また、資材選定時に「エコマーク」や「グリーン購入法適合品」などの認証を意識することから始めるのも有効です。

Q. 「グリーン建材」のコストは従来品より高いですか?

A. 一概には言えませんが、初期コスト(材料費)は従来品より高くなる傾向があります。しかし、LCA(ライフサイクル)の視点で見ることが重要です。例えば、断熱性能の高い資材は、使用中の光熱費を削減できます。また、耐久性が高くメンテナンス費用を抑えられる場合もあり、建設から解体までの「ライフサイクルコスト(LCC)」で比較すると、トータルでは従来品より有利になる可能性もあります。

Q. 環境負荷を数値化(見える化)する方法はありますか?

A. はい、最も一般的な手法は「LCA(ライフサイクルアセスメント)」です。これには専門的な分析が必要ですが、最近では業界団体が提供するLCAデータベースや、簡易評価ツールも存在します。また、より手軽な方法として、資材メーカーが製品ごとに公開している「カーボンフットプリント(CO2排出量)」や、各種環境認証(エコマークなど)の有無を収集・比較することも「見える化」の第一歩となります。

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