【中小企業向け】建設業で活用しやすい補助金とは?比較して解説

この記事の要約
- 建設業の中小企業が使える補助金の基本
- 主要な補助金4種(ものづくり・事業再構築等)を比較
- 補助金申請の流れと採択される選び方のコツ
- 目次
- 建設業の中小企業こそ知っておきたい「補助金」の基礎知識
- 補助金と助成金の違いとは?
- 建設業で補助金を活用するメリット
- 補助金申請に関するよくある不安や疑問
- 「手続きが複雑で時間がかかりそう…」
- 「自社に合う補助金がどれか分からない…」
- 「申請しても採択されるか不安…」
- 建設業の中小企業におすすめの主要な補助金
- ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
- 事業再構築補助金
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 【比較表】建設業で活用しやすい補助金の違い
- 補助金活用の基本的な流れ
- 自社に最適な補助金を選ぶための3つのポイント
- まとめ:建設業の課題解決に補助金を賢く活用しよう
- 補助金に関する情報の参照元(出典)
- 建設業の補助金に関するよくある質問
- Q. 複数の補助金を同時に申請できますか?
- Q. 補助金はいつもらえるのですか?
- Q. 申請すれば必ず採択されますか?
建設業の中小企業こそ知っておきたい「補助金」の基礎知識
建設業では、人手不足、技術革新への対応、生産性向上など多くの課題があります。これらの課題解決を資金面で後押しするのが補助金です。国や自治体の政策目的に沿った事業計画に対し、経費の一部が支給されます。設備投資やシステム導入を検討する中小企業にとって、補助金は事業成長の強力な味方となります。まずは混同されがちな「助成金」との違いから理解を深めましょう。
補助金と助成金の違いとは?
補助金と助成金は、どちらも国や自治体から支給される返済不要の資金ですが、その性質は異なります。以下の表で主な違いを整理します。
補助金と助成金の比較表
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 国の政策目標(生産性向上、IT化など)の実現 | 雇用の安定、労働環境の改善など |
| 財源 | 主に経済産業省(予算あり) | 主に厚生労働省(雇用保険料など) |
| 審査 | 審査あり(採択・不採択がある) | 要件を満たせば原則支給される |
| 申請期間 | 公募期間が定められている | 通年で募集していることが多い |
| 支給時期 | 原則、事業実施後の後払い | 申請・審査後に支給(一部例外あり) |
建設業の設備投資やDX推進など、「新たな取り組み」に対して活用しやすいのは、主に「補助金」となります。
建設業で補助金を活用するメリット
補助金を活用することは、単に資金を得られるだけでなく、企業の体質強化にもつながります。建設業の中小企業が享受できる主なメリットは以下の通りです。
- 資金調達の負担軽減
最新のICT建機や高価な施工管理ソフトウェアの導入には多額の初期費用がかかります。補助金を活用すれば、その経費の一部が補助されるため、自己負担を大幅に減らし、資金繰りの懸念なく設備投資を判断できます。 - 生産性の向上
補助金を活用して最新の機械やITツールを導入することは、業務効率化や人手不足対策に直結します。例えば、施工管理アプリによる情報共有の迅速化や、ICT建機による作業の自動化は、現場の生産性を飛躍的に高める可能性があります。 - 事業革新の促進
「ドローン測量を始めたい」「BIM/CIMを本格導入したい」といった、新規事業やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進のきっかけとしても有効です。補助金申請のための事業計画策定プロセスが、自社の将来像を具体化する機会にもなります。 - 競争力の強化
新しい技術や工法を積極的に取り入れることで、技術力や品質管理体制が強化され、他社との差別化につながります。これにより、公共工事の入札評価や民間からの受注機会の拡大が期待できます。
補助金申請に関するよくある不安や疑問
補助金はメリットが大きい反面、「手続きが難しそう」といった不安を感じる経営者の方も少なくありません。ここでは、中小企業の経営者が抱えがちな3つの典型的な疑問にお答えし、誤解や不安を解消します。申請を検討する前に、まずは現状を正しく理解しましょう。
「手続きが複雑で時間がかかりそう…」
補助金申請には、事業の目的や内容、将来性などを具体的に記述した事業計画書の作成が必要です。確かにこの作業には一定の手間がかかります。しかし、最近は「GビズID」を利用した電子申請が主流となり、書類の郵送や窓口持参といった手間は大幅に削減されています。また、この記事で解説する基本的な流れを掴めば、準備を効率的に進めることが可能です。
「自社に合う補助金がどれか分からない…」
補助金には非常に多くの種類があり、目的や対象経費も様々です。「ものづくり補助金」「IT導入補助金」など、目的に応じて選ぶ必要があります。重要なのは、まず自社が「何のために(目的)」「何を導入したいのか(手段)」を明確にすることです。目的が明確になれば、どの補助金が最適か絞り込みやすくなります。
「申請しても採択されるか不安…」
補助金には予算と採択件数に上限があり、審査によって採択・不採択が決まります。申請すれば必ず通るわけではない点は事実です。しかし、採択の可能性を高めることは可能です。審査では、事業の革新性、実現可能性、費用対効果、そして政策目的との合致度などが評価されます。これらのポイントを押さえた、質の高い事業計画書を作成することが採択への鍵となります。
建設業の中小企業におすすめの主要な補助金
建設業が直面する「生産性向上」「事業革新」「DX推進」「販路開拓」といった目的別に、活用しやすい代表的な補助金を4つ紹介します。自社の課題がどの補助金の目的に合致するかを確認し、最適な制度を見つける参考にしてください。
- ご注意
補助金制度は、予算や政策の変更に伴い、公募時期、申請枠、補助上限額、要件などが頻繁に変更されます。ここで紹介するのはあくまで概要です。申請を検討する際は、必ず各補助金事務局の公式サイトで最新の「公募要領」をご確認ください。

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
- 概要
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。中小企業・小規模事業者等が取り組む、生産性向上に資する革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資などを支援する補助金です。建設業におけるICT活用や高効率な機械導入と非常に相性が良い制度です。 - 建設業での活用イメージ
- 高性能な建設機械(ICT建機など)の導入:測量から施工、検査までをICTで連携させ、作業効率と精度を大幅に向上させるための建機導入。
- 3D CADやBIM/CIMソフトなどのシステム導入:設計の3次元化や施工シミュレーションを行い、手戻りの削減や積算業務の効率化を図るためのソフトウェア導入。
事業再構築補助金
- 概要
ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編など、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等を支援します。他の補助金に比べて補助上限額が大きく、建物費なども対象になる場合があるのが特徴です。 - 建設業での活用イメージ
- 従来の土木・建築事業に加え、新たにドローン測量サービス事業を開始:ドローンと解析ソフトを導入し、測量事業を新たな収益の柱として立ち上げる。
- 解体事業者が、解体材を再利用した新製品開発・製造に乗り出す:廃材を処理するだけでなく、リサイクル建材として加工・販売する新たな製造ラインを構築する。
IT導入補助金
- 概要
中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートします。特にバックオフィス業務のデジタル化や、現場との情報共有ツールの導入に適しています。 - 建設業での活用イメージ
- 勤怠管理システムや給与計算ソフトの導入:現場ごとに異なる勤務形態や複雑な手当計算を自動化し、バックオフィス業務の負担を軽減する。
- 受発注システムや施工管理アプリの導入:電話やFAX中心だった受発注業務をデジタル化したり、現場の進捗状況や図面をリアルタイムで共有したりする。
小規模事業者持続化補助金
- 概要
従業員数が少ない小規模事業者(建設業の場合は常時使用する従業員数が20人以下など)が行う、販路開拓や生産性向上の取組を支援する補助金です。他の補助金と比べて補助上限額は低いものの、比較的採択されやすく、広報活動などにも使いやすいのが特徴です。 - 建設業での活用イメージ
- 自社の技術力や施工実績を紹介するホームページの作成・改修:新たな顧客層(個人宅のリフォーム、特定工法の発注者など)に自社の強みをアピールする。
- 新たな顧客層にアプローチするためのチラシ作成・ポスティング:商圏内のターゲットに対し、サービス内容を周知するための広告宣伝費として活用する。
【比較表】建設業で活用しやすい補助金の違い
ここまで紹介した4つの主要な補助金について、目的、対象経費、補助額などの違いを一覧表にまとめました。自社の目的や投資規模に応じて、どの補助金が最も適しているかを比較検討する際にご活用ください。
建設業で活用しやすい主要4補助金の比較表
| 補助金名 | 主な目的 | 主な対象経費 | 補助上限額(目安) | 補助率(目安) | 建設業での活用シーン例 |
|---|---|---|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 生産性向上・革新的な取組 | 機械装置・システム構築費 | 750万~5,000万円程度(枠による) | 1/2, 2/3など | ICT建機の導入、高機能な設計ソフト導入 |
| 事業再構築補助金 | 新分野展開・事業転換 | 建物費、機械装置費、広告宣伝費など | 枠により大きく異なる(例: 2,000万円~) | 1/2, 2/3など | ドローン測量事業への進出、新素材開発 |
| IT導入補助金 | 業務効率化・DX推進 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料 | 枠により異なる(例: 5万~350万円) | 1/2, 3/4など | 勤怠管理ソフト、施工管理アプリの導入 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓・生産性向上 | 広報費、ウェブサイト関連費、展示会出展費 | 50万~200万円程度(枠による) | 2/3, 3/4など | 会社案内のパンフレット作成、ホームページ開設 |
- (注)
補助上限額や補助率は、申請枠や年度によって変動します。申請の際は、必ず事務局が公開する最新の公募要領をご確認ください。
補助金活用の基本的な流れ
補助金は申請してすぐに受給できるわけではありません。事業計画の策定から始まり、採択決定、事業実施、そして完了報告を経て、最後に入金されるという一連の流れがあります。SGE(検索生成体験)での抽出を意識し、基本的な8つのステップを解説します。
- 自社の課題と目的の明確化
- 目的:なぜ補助金が必要かを明確にします。「現場の人手不足を解消したい」「積算業務の精度を上げたい」など、経営課題を洗い出します。
- 補助金の情報収集と比較
- 目的:ステップ1の課題を解決できる最適な補助金を探します。経済産業省の「ミラサポplus」や各補助金公式サイトで公募要領を比較検討します。
- 事業計画書の作成
- 目的:補助金申請の核となる作業です。自社の現状、課題、補助金で何を実現するか、スケジュール、経費、費用対効果(生産性向上率など)を具体的に記述します。
- 申請手続き(GビズIDの準備)
- 目的:公募期間内に指定された方法で申請します。
- 注意点:近年は「GビズIDプライム」(法人・個人事業主向けの共通認証システム)を利用した電子申請が必須な場合がほとんどです。ID取得には時間がかかるため、早めに準備しましょう。
- 審査・採択・交付決定
- 目的:事務局による審査を受け、採択を待ちます。採択通知後、交付申請を経て「交付決定通知書」を受領します。
- 事業の実施
- 目的:計画書記載の設備発注やシステム導入を実行します。
- 注意点:必ず「交付決定通知書」の日付以降に発注・契約してください。それ以前の経費は補助対象外となるのが原則です。
- 実績報告
- 目的:事業完了後、計画通りに経費を使ったことを証明する書類(見積書、契約書、領収書など)を揃え、事務局に報告します。
- 補助金の受給
- 目的:実績報告が承認されると補助金額が確定し、指定口座に振り込まれます。
- 注意点:これが「後払い(精算払い)」の原則です。事業期間中の資金繰り計画が重要です。
自社に最適な補助金を選ぶための3つのポイント
数ある補助金の中から、自社に最も適したものを見つけ出すには、いくつかの重要なチェックポイントがあります。目的が曖昧なまま申請しても採択は難しくなります。以下の3つのポイントを基準に、最適な補助金を絞り込みましょう。
導入したい設備やシステムが対象か
補助金にはそれぞれ「対象となる経費」と「対象外の経費」が公募要領で厳密に定められています。例えば、「ものづくり補助金」は革新的な設備投資が中心ですが、単なる買い替えや汎用品(PC、タブレット、車両など)は対象外となる場合があります。自社が導入したいものが、検討している補助金の対象経費に明確に含まれているかを必ず確認しましょう。申請要件を満たしているか
補助金には、対象となる事業者の要件が定められています。最も基本的なのは「中小企業基本法」に基づく資本金や常時使用する従業員数です。建設業の場合、資本金3億円以下または従業員300人以下が中小企業の定義となることが一般的です。また、補助金の種類によっては「売上高の減少要件」(事業再構築補助金など)が課される場合もあります。公募期間はいつか
補助金は通年で募集しているわけではなく、「公募期間」が定められています。特に人気の高い補助金(ものづくり補助金、事業再構築補助金など)は、年に数回の締切が設けられています。事業計画書の作成には時間がかかるため、導入したい設備の納期なども考慮し、公募スケジュールを早めに把握して計画的に準備を進めることが重要です。
まとめ:建設業の課題解決に補助金を賢く活用しよう
建設業の中小企業にとって、補助金は、資金的な負担を軽減しつつ、生産性向上、人手不足対策、DX推進といった喫緊の課題を解決するための強力な手段となります。
補助金には多くの種類がありますが、「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」「IT導入補助金」などが建設業の設備投資やシステム導入と相性が良いと言えます。
自社の課題を明確にし、目的に合った補助金を選び、その補助金が求める「事業の将来性」や「革新性」を具体的に示す事業計画を作成することが採択への近道です。手続きは複雑に感じるかもしれませんが、この記事で紹介したような主要な補助金の活用を検討し、事業の成長と競争力強化につなげましょう。
補助金に関する情報の参照元(出典)
この記事で紹介した補助金に関する情報は、以下の公的機関の情報を基に作成しています。制度の詳細は変更される可能性があるため、最新かつ正確な情報は必ず以下の一次情報源からご確認ください。
- [出典:経済産業省 ミラサポplus(中小企業向け補助金・支援サイト)]
- [出典:中小企業庁]
- [出典:ものづくり補助金総合サイト]
- [出典:事業再構築補助金 公式サイト]
- [出典:IT導入補助金2024 公式サイト]
- [出典:小規模事業者持続化補助金(商工会議所地区)]
建設業の補助金に関するよくある質問
最後に、建設業の経営者から寄せられる補助金に関する代表的な質問と、それに対する回答をまとめました。
Q. 複数の補助金を同時に申請できますか?
A. 同一の事業内容(例:AというICT建機を導入する事業)に対して、国や地方自治体の複数の補助金を重複して受給することは原則できません。
ただし、事業内容が異れば(例:「ものづくり補助金」でICT建機を導入し、「IT導入補助金」で勤怠管理ソフトを導入する)、併用が可能なケースもあります。詳細は各補助金の公募要領で「重複申請の制限」に関する記載を必ず確認してください。
Q. 補助金はいつもらえるのですか?
A. 多くの補助金は、事業を実施し、必要な経費を支払った後の「後払い(精算払い)」が原則です。つまり、採択が決定したらすぐにお金が振り込まれるわけではありません。
事業実施期間中は、設備代金などを自社で一時的に立て替えて支払う必要があります。事業完了後の実績報告と審査を経て、数ヶ月後に補助金が振り込まれるため、事業期間中の資金繰りには十分注意が必要です。
Q. 申請すれば必ず採択されますか?
A. いいえ、補助金には審査があり、申請しても必ず採択されるとは限りません。 助成金とは異なり、補助金には国が確保した予算と採択件数の上限があるためです。
審査では、事業計画の内容(革新性、市場での優位性、実現可能性、費用対効果など)が、他の申請者と比較評価されます。公募要領の審査項目をよく読み、自社の取り組みがいかに優れており、国の政策目的に合致しているかを説得力を持って記述することが重要です。





