「補助金」の基本知識

建設業で使える補助金とは?種類と基本をわかりやすく解説


更新日: 2025/10/16
建設業で使える補助金とは?種類と基本をわかりやすく解説

この記事の要約

  • IT導入補助金など建設業が使える補助金のメリットを解説
  • 自社に合う補助金の選び方と申請で失敗しない3つのコツ
  • 補助金申請の相談先は?専門家や公的機関の活用法も紹介

建設業が補助金を活用する3つのメリット

建設業界で事業を営む上で、補助金の活用は単なる資金調達以上の価値を持ちます。返済不要の資金を得られるだけでなく、設備投資やIT化といった新たな取り組みへの挑戦を後押しし、企業の成長を加速させる起爆剤となり得ます。ここでは、建設業の事業者が補助金を戦略的に活用することで得られる、具体的な3つのメリットについて詳しく解説します。

メリット1:資金調達の負担を軽減できる

最大のメリットは、返済不要の資金を調達できる点です。金融機関からの融資とは異なり、補助金は原則として返済の義務がありません。これにより、自己資金の持ち出しを抑えながら、大規模な設備投資や人材育成、新規事業の立ち上げに必要な資金を確保できます。特に、資金繰りが重要な課題となる建設業にとってこのメリットは大きく、財務体質の強化にも直結します。

メリッ2:IT化や設備投資など新しい挑戦がしやすくなる

補助金は、企業の生産性向上や競争力強化を目的としたものが多く、これまでコスト面で見送りがちだった新しい挑戦を可能にします。例えば、BIM/CIMといった最新の設計ツールや、勤怠管理システムなどのITツール導入によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、あるいは新工法に対応するための高性能な重機導入などが挙げられます。補助金をトリガーとして、企業の変革を積極的に進めることができます。

メリット3:事業の信頼性向上につながる

国の政策目標に沿った事業計画が評価され、補助金の採択を受けることは、企業の社会的信用度を高める効果があります。採択されたという事実は、事業の将来性や計画の妥当性が国から認められたという客観的な証明になります。これにより、金融機関からの追加融資が受けやすくなったり、取引先や顧客からの信頼が向上したりと、事業展開において有利に働く場面が増えるでしょう。

【2025年最新】建設業で使える代表的な補助金の種類

建設業で活用できる補助金は、目的や対象に応じて多岐にわたります。自社の課題や目指す方向性に合った制度を見つけることが成功の鍵です。ここでは、全国の建設事業者が広く活用できる代表的な4つの補助金制度に焦点を当て、2025年時点の情報を踏まえながら、それぞれの概要と具体的な活用イメージを分かりやすく紹介します。

IT導入補助金

概要:中小企業・小規模事業者が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートする制度です。会計ソフトや受発注システム、顧客管理システムなど、幅広いITツールが対象となります。インボイス制度に対応する枠も設けられています。
建設業での活用例
・勤怠管理・給与計算ソフトの導入による労務管理の効率化
・現場管理アプリやグループウェアの導入による情報共有の円滑化
・BIM/CIM関連ソフトウェアの導入による生産性向上
[出典:IT導入補助金 公式サイト]

ものづくり補助金(省力化(オーダーメイド)枠など)

概要:正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、中小企業等が行う革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善を目的とした設備投資等を支援する制度です。近年では、人手不足解消に向けた省力化投資を支援する「省力化(オーダーメイド)枠」などが注目されています。
建設業での活用例
・新工法に必要となる専用の建設機械や加工設備の導入
・ICT技術を活用した遠隔での施工管理システムの開発・導入
・IoTセンサーやAIを活用した、熟練技術者の技能伝承システムの構築
[出典:ものづくり補助金総合サイト]

事業再構築補助金

概要:ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の新市場進出や事業・業種転換、事業再編といった、思い切った事業再構築に挑戦する企業を支援する制度です。補助額が大きいのが特徴で、近年は成長分野への大胆な事業転換をより重点的に支援する傾向にあります。
建設業での活用例
・従来の土木・建築事業に加え、ドローンを活用した測量・インフラ点検事業へ新規参入
・空き家をリノベーションし、宿泊施設や商業施設として運営する不動産事業を開始
・解体事業のノウハウを活かし、産業廃棄物のリサイクル・再資源化事業を展開
[出典:事業再構築補助金 公式サイト]

小規模事業者持続化補助金

概要:従業員数が少ない小規模事業者を対象に、販路開拓や業務効率化の取り組みを支援する制度です。比較的申請しやすく、幅広い経費が対象となるため、多くの事業者にとって活用のハードルが低いのが特徴です。
建設業での活用例
・新規顧客を獲得するための公式ウェブサイトや施工事例ページの制作
・商圏内の潜在顧客へ向けた宣伝用チラシの作成・ポスティング
・地域の商工会議所が開催する展示会への出展費用
[出典:全国商工会連合会 小規模事業者持続化補助金]

【補足】都道府県・市区町村の独自制度もチェックしよう

国が主体となって実施する補助金のほかに、各都道府県や市区町村が独自に建設業者向けの補助金・助成金制度を設けている場合があります。例えば、若手人材の確保を目的とした研修費用の助成や、地域産木材の利用促進に関する補助金など、より地域の実情に合った支援が期待できます。自社の所在地がある自治体のウェブサイトも必ず確認しましょう。

【比較表】自社の課題から選ぶ補助金の選び方

数ある補助金の中から、自社の目的や規模に最適なものを見つけ出すのは簡単なことではありません。それぞれの補助金が持つ目的や対象となる事業者の特徴を正しく理解することが、適切な選択への第一歩です。以下の比較表を参考に、自社の課題解決や目標達成に最も貢献する補助金はどれか、検討してみてください。

補助金の活用について会議する建設会社の従業員たち

建設業で使える代表的な補助金の比較

補助金名 主な目的 こんな事業者様におすすめ
IT導入補助金 業務効率化・DX推進 バックオフィス業務を効率化したい、情報共有をスムーズにしたい
ものづくり補助金 革新的な製品・サービス開発、省力化 新技術や新工法を導入して生産性を向上させたい、人手不足を解消したい
事業再構築補助金 新分野展開・事業転換 既存事業とは異なる成長分野へ挑戦したい
小規模事業者持続化補助金 販路開拓・知名度向上 新規の顧客を獲得したい、自社の強みをPRしたい

補助金申請の基本フローと最重要ポイント

補助金を確実に受給するためには、申請から事業完了報告までの一連の流れを正確に把握し、各ステップで求められる対応を適切に行うことが不可欠です。特に、手順を誤ると採択されても補助金が受け取れないケースもあるため注意が必要です。ここでは、申請における基本的なプロセスと、採択を左右する重要なポイントを解説します。

STEP1:公募要領の確認と事業計画の策定

1. 公募要領の熟読
申請を検討している補助金の公式サイトから最新の「公募要領」をダウンロードし、隅々まで読み込みます。対象者、補助対象経費、申請要件、スケジュールなどの基本情報を正確に把握してください。

2. 事業計画の策定
公募要領で示された目的に沿って、自社が補助金を活用して何を実現したいのか、具体的な事業計画を策定します。自社の強み、課題、市場の状況を分析し、説得力のあるストーリーを構築することが重要です。

STEP2:申請書類の準備と電子申請(Jグランツ)

1. 必要書類の準備
事業計画書をはじめ、決算書や履歴事項全部証明書など、公募要領で定められた必要書類を漏れなく準備します。

2. 電子申請システムの入力
多くの補助金では、国が運営する電子申請システム「Jグランツ」を利用します。事前にGビズIDプライムアカウントの取得が必要となるため、早めに手続きを済ませておきましょう。システム上で必要事項を入力し、準備した書類をアップロードして申請を完了させます。

STEP3:審査・採択・交付決定

1. 審査
事務局によって、提出された事業計画書の内容が審査されます。事業の革新性や市場性、実現可能性などが多角的に評価されます。

2. 採択発表
審査期間を経て、採択者が公式サイトで発表されます。

3. 交付申請・決定
採択された後、補助金の交付を受けるための「交付申請」手続きを行います。この内容が承認されると「交付決定通知」が届き、正式に事業を開始できます。

STEP4:事業の実施と実績報告

1. 事業の実施
交付決定された事業計画に沿って、設備の発注やITツールの導入などを進めます。

2. 実績報告
事業期間が終了したら、計画通りに事業を実施したことを証明するため、発注書や請求書、写真などの証拠書類を添えて「実績報告書」を作成し、事務局へ提出します。

3. 補助金額の確定・支払い
実績報告書の内容が検査され、補助金額が最終的に確定します。その後、指定した銀行口座に補助金が振り込まれます。

【最重要】補助金申請 最大の注意点

注意点1:交付決定前の発注・契約は補助対象外
最も重要なルールです。補助金は、事務局から「交付決定通知」を受け取った後に契約・発注した経費のみが対象となります。採択されるだろうと見越して、交付決定前に設備を発注したり、システムの契約をしたりすると、その経費は全額補助対象外となってしまいます。必ず「交付決定日」以降の日付で契約・発注を行ってください。

注意点2:公募要領の加点・減点項目を熟読する
公募要領には、審査で有利になる「加点項目」(例:賃上げ計画、DX推進への取り組みなど)が明記されています。自社が該当する加点項目を事業計画に漏れなく盛り込むことで、採択の可能性を大きく高めることができます。

注意点3:申請スケジュールには余裕を持つ
GビズIDプライムアカウントの発行には2〜3週間程度かかる場合があります。また、質の高い事業計画書の作成にも多くの時間が必要です。公募締切の直前になって慌てないよう、公募が開始されたらすぐに準備に取り掛かりましょう。

建設業の補助金に関する不安と相談先

補助金は魅力的な制度である一方、「手続きが複雑そう」「本当に採択されるのだろうか」といった不安を感じる方も少なくありません。しかし、これらの不安は事前の情報収集と適切な準備、そして専門家の活用によって解消することが可能です。ここでは、事業者が抱えがちな不安と、具体的な相談先について解説します。

補助金を活用したプロジェクトの成功を喜ぶ建設技術者

不安1:「どの補助金が自社に合うかわからない」

まずは自社の「目的」を明確にすることが重要です。「業務を効率化したい」のであればIT導入補助金、「新しい工法を試したい」ならものづくり補助金、というように、目的から逆引きで探すと候補を絞りやすくなります。それでも迷う場合は、後述する公的な支援機関などに相談することをおすすめします。

不安2:「事業計画書の作成が難しそう」

事業計画書は、審査員に「この事業に投資する価値がある」と納得してもらうためのプレゼンテーション資料です。完璧な文章力よりも、自社の現状分析、課題、補助事業による解決策、そして将来の展望といったストーリーに一貫性があることが重要です。公募要領に記載されている審査項目を一つひとつ確認しながら、その問いに答える形で項目を埋めていくと、論理的な計画書を作成しやすくなります。

不安3:「申請しても採択されるかどうかが心配」

補助金は、国の政策目標を実現するための手段です。したがって、自社の事業計画が、その補助金が掲げる政策テーマ(例:生産性向上、DX推進、賃上げなど)にどれだけ貢献できるかを明確にアピールすることが採択の鍵となります。自社の利益だけでなく、社会や業界全体にどのような好影響をもたらすか、という視点を盛り込むことで、計画の評価は格段に高まります。

どこに相談すればいい?補助金の専門家と公的支援機関

自社だけで申請準備を進めるのが難しいと感じた場合は、外部の専門家や支援機関を積極的に活用しましょう。

商工会議所・商工会
地域経済の発展を支援する公的団体です。経営指導員が常駐しており、補助金申請に関する相談や事業計画書作成のサポートを無料で受けられる場合があります。

よろず支援拠点
国が全国に設置している無料の経営相談所です。中小企業・小規模事業者のあらゆる経営課題に対応しており、補助金の専門家によるアドバイスを受けることも可能です。

中小企業診断士・行政書士などの専門家
補助金申請のプロフェッショナルです。有料にはなりますが、事業計画の策定から申請手続きの代行まで、一貫したサポートを受けることができます。採択率を高めたい場合や、手続きに時間を割けない場合に有効な選択肢です。

まとめ:補助金を有効活用し、事業成長を加速させよう

本記事では、建設業で活用できる補助金について、そのメリットから種類、申請の流れ、そして申請時の重要な注意点や相談先までを網羅的に解説しました。

補助金は、返済不要の貴重な資金調達手段であり、企業の成長を後押しする強力なツールです。IT化による業務効率の改善、新設備導入による生産性向上、そして新規事業への挑戦など、補助金をきっかけに実現できることは数多くあります。重要なのは、自社の課題や将来のビジョンに合った補助金を見つけ、その制度の趣旨を理解した上で、説得力のある事業計画をしっかりと練り上げることです。ぜひこの記事を参考に、補助金の活用を積極的に検討し、貴社の事業成長を加速させてください。

よくある質問

Q. 補助金と助成金の違いは何ですか?
A. 補助金は、主に経済産業省などが管轄し、国の政策目標を達成するために設けられます。公募期間が定められており、提出された事業計画を審査した上で採択・不採択が決まる「審査」があるのが特徴です。一方、助成金は、主に厚生労働省が管轄し、雇用の安定などを目的とします。一定の要件を満たしていれば、原則として受給できる場合が多いという違いがあります。

Q. 申請すれば必ず補助金はもらえますか?
A. いいえ、必ずもらえるわけではありません。補助金には国の予算が充てられており、その予算と採択件数には上限があります。申請期間中に提出された多数の事業計画の中から、内容を厳格に審査した上で、評価の高いものから順に採択されます。そのため、事業計画の独自性や実現可能性、政策への貢献度といった「計画の質」が非常に重要になります。

Q. 複数の補助金に同時に申請することは可能ですか?
A. 原則として、同一の事業内容(同じ設備投資やITツール導入など)で複数の補助金を受給することはできません。しかし、事業内容が異なっていれば、複数の補助金に同時に申請することは可能です。例えば、「Aという設備を導入するためにものづくり補助金を申請し、Bというソフトウェアを導入するためにIT導入補助金を申請する」といったケースは認められます。ただし、制度によっては併用を制限している場合もあるため、必ずそれぞれの公募要領でルールを確認してください。

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