「補助金」の基本知識

補助金・助成金・給付金の違いとは?建設業で使えるのはどれ?


更新日: 2025/10/21
補助金・助成金・給付金の違いとは?建設業で使えるのはどれ?

この記事の要約

  • 補助金・助成金・給付金の違いを一覧表で比較
  • 建設業が使える補助金は設備投資やDX化が中心
  • 建設業の助成金は人材育成や環境改善に有効

補助金・助S成金・給付金の基本的な違い早わかりガイド

資金調達や経営支援の制度として「補助金」「助成金」「給付金」がありますが、これらは目的や管轄、審査の有無が異なります。建設業の経営者が自社の課題解決に最適な制度を選ぶためには、まずこの基本的な違いを理解することが不可欠です。本章では、3つの制度の概要と、建設業特有の資金調達の悩みについて整理します。

結局、何が違う?3つの制度の目的と概要

まずは、混同されがちな「補助金」「助成金」「給付金」の3つが、それぞれどのような目的で、誰から支給されるものなのか、基本的な定義を解説します。

補助金(ほじょきん): 国や地方自治体が、特定の政策目的(例:事業拡大、IT化推進、研究開発)に合致する事業者の取り組みを支援するためのお金です。
助成金(じょせいきん): 主に厚生労働省が管轄し、雇用の安定、人材育成、労働環境の改善など、雇用関連の課題に取り組む事業者を支援するためのお金です。
給付金(きゅうふきん): 国や地方自治体が、特定の条件(例:新型コロナウイルスの影響、自然災害による被害)に該当した国民や事業者を支援・救済するために支給するお金です。

目的の違いを理解することが、自社に合う制度を見つける第一歩です。

補助金・助成金・給付金の比較一覧

3つの制度の主な違いを一覧表にまとめました。全体像を素早く把握するためにご活用ください。

補助金・助成金・給付金の比較表

比較項目 補助金 助成金 給付金
主な目的 国の政策推進(事業拡大、IT化、研究開発など) 雇用の安定・促進(人材育成、労働環境改善など) 国民・事業者への支援・救済(生活困窮、災害時など)
主な管轄 経済産業省、地方自治体 など 厚生労働省 など 国、地方自治体 など
審査の有無 あり(審査で採択・不採択が決まる) 原則なし(要件を満たせば受給可能) 原則なし(要件を満たせば受給可能)
予算・件数 予算・採択件数に上限あり(先着順や審査結果による) 予算内であれば随時受付(通年募集が多い) 要件該当者すべて(予算が組まれる)
公募期間 短期間(数週間〜1ヶ月程度)が多い 通年または長期間が多い 緊急時や特定の期間が多い
主な対象 主に事業者 主に事業者(特に雇用保険適用事業者) 個人・事業者(制度による)
返済義務 原則不要 原則不要 原則不要

建設業経営者が抱えがちな資金調達の悩み

本題に入る前に、建設業の経営者がよく直面する資金面の課題を整理します。これらの課題解決に、補助金や助成金が役立つ可能性があります。

・ 新しい重機やITツール(施工管理ソフトなど)を導入したいが、初期費用が高い
・ 若手の人材を採用・育成したいが、教育コスト(資格取得費用など)がかかる
・ 現場の安全対策や労働環境(週休二日制の導入など)を改善したい
・ 事業を拡大(新分野への進出など)したいが、自己資金だけでは不安がある

【種類別】補助金・助成金・給付金の詳細解説

3つの制度には、その性質によって明確な役割分担があります。補助金は「投資」の支援、助成金は「雇用」の支援、給付金は「救済」措置と大別できます。それぞれの詳細な定義と、どのような場合に活用できるのかを解説します。自社の目的がどれに当てはまるかを確認しましょう。

「補助金」とは?事業拡大を目指すなら

補助金は、主に経済産業省(中小企業庁)や地方自治体が管轄し、国の政策目標(例:生産性向上、DX推進、グリーン化、事業承継)に沿った事業の取り組みを支援する制度です。

最大の特性は「審査がある」ことです。事業者は事業計画書を作成し、その内容が政策目的に合致し、革新的で成長性が見込めるかを厳しく審査されます。採択されなければ受給できません。
また、予算や採択件数に上限があるため、公募期間が短く設定されることが一般的です。受給できる金額は数百万円から数千万円と、助成金に比べて比較的大きい傾向にあります。建設業では、新しい工法の導入やIT化、新事業展開などに活用しやすいのが特徴です。

[出典:中小企業庁「2024年度中小企業施策利用ガイドブック」P.128 補助金(補助事業)]

「助成金」とは?雇用環境の改善を目指すなら

助成金は、主に厚生労働省が管轄し、雇用の安定や労働環境の改善を目的としています。例えば、従業員のスキルアップのための研修費用、非正規社員の正規化、育児・介護休業制度の整備、高齢者雇用などが対象です。

補助金との大きな違いは「要件を満たせば原則受給できる」点です。審査はありますが、事業計画の優劣を競うものではなく、定められた要件(例:就業規則の改定、研修の実施)をクリアしているかを確認するものです。通年で募集されているものも多く、計画的に取り組みやすいのが特徴です。ただし、多くの場合「雇用保険適用事業者」であることが前提条件となります。

[出典:厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」]

「給付金」とは?緊急時のセーフティネット

給付金は、特定の条件(例:新型コロナウイルスの影響、自然災害の発生)に該当した個人や事業者に対して、生活や事業の継続を支援するために支給されるお金です。

支援・救済、あるいは損失の補填といった意味合いが強く、補助金や助成金とは異なり、新たな事業投資や雇用改善を直接の目的とはしていません。申請要件を満たしていれば原則として受給できます。持続化給付金や事業復活支援金、各種協力金などがこれに該当します。

建設業で活用できるのはどれ?主な制度を紹介

建設業の課題は「モノ・ITへの投資」と「ヒト(雇用)への投資」に大別されます。したがって、建設業は「補助金」と「助成金」のどちらも活用できる機会が多い業種です。自社の課題がどちらに当てはまるかを確認し、活用できる具体的な制度の種類を見ていきましょう。

タブレット端末で施工管理を行う建設作業員

建設業向けの「補助金」:設備投資やDX化に

建設業が最も活用しやすいのが補助金です。高額な重機の購入、施工管理アプリやBIM/CIMソフトの導入、ドローンによる測量、あるいは建設業のノウハウを活かした新分野への進出など、生産性向上や技術革新、事業拡大のための「未来への投資」に利用できるものが多くあります。

建設業で活用しやすい補助金の種類
事業再構築補助金:既存事業とは異なる新分野への進出(例:解体業者が新たにリフォーム事業を始める)など、思い切った事業再構築を支援します。
ものづくり補助金:革新的なサービス開発や生産プロセスの改善(例:新型重機の導入、ITを活用した新工法の開発)を支援します。
IT導入補助金:施工管理ソフト、勤怠管理システム、会計ソフトなど、バックオフィス業務や現場のDX化を支援します。
小規模事業者持続化補助金:新たな販路開拓(例:ホームページの作成・改修、チラシの作成)など、小規模事業者の取り組みを支援します。

建設業向けの「助成金」:人材育成や安全対策に

建設業は慢性的な人手不足や高齢化が課題であり、「人」に関する取り組みが不可欠です。助成金を活用することで、従業員の資格取得支援、若手技術者の研修、安全衛生設備の導入、週休二日制の導入など、働きやすい環境づくりを金銭的にサポートしてもらえます。

建設業で活用しやすい助成金の種類
人材開発支援助成金:従業員に技能講習や特別教育、中堅社員向けの研修などを実施する際の費用(研修費用、賃金)を助成します。
キャリアアップ助成金:有期雇用の作業員を正規雇用に転換したり、処遇改善(賃金アップなど)を行ったりした場合に助成されます。
建設労働者確保育成助成金:建設業に特化した助成金で、若手や女性の入職・定着を図るための取り組み、技能実習、認定職業訓練などに幅広く対応しています。

建設業向けの「給付金」:主に緊急時に

建設業が事業として活用する場面は限定的です。しかし、自然災害(台風や地震)による資材の損壊や現場の休止、あるいは新型コロナウイルスのような社会全体に影響が及ぶ事態が発生した際には、事業継続支援や休業補償として給付金が設けられることがあります。緊急時のセーフティネットとして情報を確認することが重要です。

建設業が補助金・助成金を申請する前の注意点と比較

補助金や助成金は返済不要の貴重な資金源ですが、申請・受給にあたっては重要な注意点があります。特に「審査の難易度」「スケジュール感」「支払いタイミング」の3点は、資金繰りに直結するため、事前に正確に理解しておく必要があります。

申請の難易度とスケジュールの違い

補助金は、厳格な審査があるため申請の難易度は高めです。
採択されるためには、自社の強みや市場のニーズを分析し、「なぜその投資が必要で、どうやって収益を上げるのか」を具体的に示した事業計画書の作成が必要です。また、公募期間が数週間程度と短いため、常に情報をチェックし、迅速に準備する必要があります。

一方、助成金は要件を満たせば受給できるため難易度は比較的低いです。
しかし、申請のためには日々の労務管理(出勤簿、賃金台帳の整備など)が適切に行われていることが大前提となります。書類の不備や申請期限の遅れで受給できなくなるケースもあるため、確実な事務処理が求められます。

原則「後払い」であることの理解

補助金も助成金も、原則として「後払い(精算払い)」です。これは非常に重要なポイントです。
申請が採択(交付決定)された後、まず事業者が全額自己資金で対象となる事業(設備投資や研修)を実施・支払いを完了させます。その後、かかった費用や実施内容を証明する実績報告書を提出し、それが承認されてから、初めてお金が振り込まれます。

したがって、事業を実行するための「つなぎ資金」は自社で用意する必要があります。補助金をあてにして金融機関からの融資を受けずに高額な重機を発注してしまうと、資金繰りがショートする危険があるため注意が必要です。

自社の目的(設備投資、人材育成など)に合っているか

制度の違いを理解したら、自社が今何をしたいのか(目的)を明確にすることが重要です。

・ 「新しいICT建機を導入して生産性を上げたい」
・ 「施工管理アプリを入れて現場の情報を一元化したい」
    → これらは補助金(ものづくり補助金、IT導入補助金など)が適しています。

・ 「若手に玉掛けや足場の資格を取らせたい」
・ 「週休二日制を導入して、求人応募を増やしたい」
    → これらは助成金(人材開発支援助成金、建設労働者確保育成助成金など)が適しています。

目的に合っていない制度に申請しても、採択される可能性は低いか、そもそも申請対象外となります。自社の課題解決に最適な制度を選ぶことが採択・受給への近道です。

まとめ:建設業は「補助金」と「助成金」の違いを理解し賢く活用しよう

この記事では、「補助金」「助成金」「給付金」の3つの制度の違いと、建設業での活用方法について解説しました。これらは混同されがちですが、目的や性質が全く異なります。

補助金
    ・ 目的:国の政策目的(DX化、事業拡大など)に沿った取り組みを支援。
    ・ 特徴:審査があり、予算の上限があるが、金額が大きい傾向。
    ・ 建設業での活用設備投資やIT導入(重機、ソフトウェア、新工法開発)に有効。

助成金
    ・ 目的:雇用の安定や労働環境の改善を支援。
    ・ 特徴:要件を満たせば受給しやすく、通年募集も多い。
    ・ 建設業での活用人材育成や安全対策(資格取得支援、労働環境改善)に有効。

給付金
    ・ 目的:緊急時の支援・救済。
    ・ 特徴:特定の条件に合致すれば受給可能。

建設業の経営者様は、まず自社の課題が「設備投資」なのか「人材・雇用」なのかを明確にし、目的に合った「補助金」または「助成金」の情報を集めることから始めてみましょう。どちらも原則「後払い」である点に留意し、計画的な資金繰りを行うことが重要です。

補助金・助成金に関するよくある質問

補助金や助成金の活用を検討する上で、多くの事業者様が疑問に思う点をQ&A形式で解説します。申請前に不明点を解消し、スムーズな手続きを目指しましょう。

Q. 補助金と助成金は併用できますか?

A. 結論から言うと、併用できるケースとできないケースがあります

できる例(目的が異なる場合)
    同じ事業者が、Aという設備投資(例:重機の購入)に対して「ものづくり補助金」を申請し、同時にBという人材育成(例:従業員の研修)に対して「人材開発支援助成金」を申請することは可能です。支援対象となる経費や目的が異なるためです。

できない例(目的が同じ場合)
    Aという設備投資(1,000万円)という1つの経費に対して、国の補助金(例:ものづくり補助金)と国の助成金(例:業務改善助成金)を二重に受け取ることは原則としてできません。国からの支援が重複してしまうためです。

Q. 申請すれば必ずもらえますか?

A. いいえ、必ずもらえるとは限りません。制度によって異なります。

補助金
    審査があるため、申請しても不採択になる可能性があります。事業計画の内容が優れているか、政策目的に合っているかなどが評価されます。競争率が高い補助金では、採択率は低くなります。

助成金
    定められた要件をすべて満たしていれば原則受給できます。ただし、申請書類の不備、期限の遅れ、そもそも要件(例:労務管理)を満たしていなかった、などの理由で受給できないこともあります。

給付金
    要件を満たしていれば原則受給できます。

Q. 建設業の一人親方でも使えますか?

A. 制度によります

補助金
    一人親方(個人事業主)であっても、対象となるケースは多くあります。ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金などは、個人事業主も対象としている場合がほとんどです。

助成金
    多くの場合「雇用保険適用事業者」であることが要件となります。そのため、従業員を雇用しておらず、雇用保険に加入していない一人親方の場合は、対象外となる可能性が高いです。

申請を検討する際は、必ず各制度の「公募要領」や「支給要件」を確認し、自社(自身)が対象者に含まれているかを確認してください。

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