【都道府県別】建設業向け補助金の種類と特徴とは?

この記事の要約
- 国と自治体の補助金の違いと使い分けを徹底解説
- 設備投資やDX、人材確保に役立つ主要な制度一覧
- 申請から受給までの流れと資金繰りの注意点を網羅
- 目次
- 建設業で活用できる補助金の基礎知識と重要性
- 国の補助金と都道府県(自治体)の補助金の違い
- 建設業が補助金活用に取り組むべきメリット
- 【目的別】建設業における主な国の補助金の種類
- 設備投資や事業再構築に使える補助金
- IT化・DX推進に使える補助金
- 人材育成・環境改善に使える補助金
- 都道府県別・自治体独自の建設業向け補助金の特徴
- 住宅リフォーム・省エネ改修に関する補助金
- 地域独自の課題解決型補助金(豪雪・林業など)
- 販路拡大・地域経済活性化のための補助金
- 都道府県・市区町村の補助金の探し方
- 補助金申請前に解消したい不安と注意点
- 補助金は「後払い」であるという資金繰りの注意
- 採択後の事務処理と報告義務の負担
- 課税対象となる場合と会計処理
- 建設業における補助金申請から受給までの流れ
- 情報収集から申請書類の作成まで
- 採択決定から事業実施・実績報告まで
- 確定検査から補助金の入金まで
- まとめ
- Q1. 個人事業主(一人親方)でも申請できる補助金はありますか?
- Q2. 補助金の申請代行をコンサルタントに依頼するメリットは?
- Q3. 複数の補助金を同じ工事で重複して申請できますか?
建設業で活用できる補助金の基礎知識と重要性
資材価格の高騰や深刻な人手不足、2024年問題による働き方改革への対応など、建設業界を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しています。こうした課題を解決し、事業を継続・発展させるための有効な資金調達手段として「補助金」の活用が注目されています。ここでは、建設業の経営者が知っておくべき補助金の基礎と、国・自治体の制度の違いについて解説します。
国の補助金と都道府県(自治体)の補助金の違い
建設業が利用できる補助金は、大きく分けて「国の補助金」と「都道府県・市区町村(自治体)の補助金」の2種類があります。これらは財源や目的、採択の難易度が大きく異なります。自社の目的に合わせて適切な制度を選ぶことが、採択への第一歩です。
- 国と自治体の補助金の特徴比較
- 国の補助金
経済産業省や国土交通省などが管轄。予算規模が大きく(数百万〜数千万円)、高額な設備投資や大規模な事業再構築に適していますが、全国規模での競争となるため審査基準は厳格です。 - 自治体の補助金
都道府県や市区町村が独自の予算で実施。地域特有の課題解決や地元企業の支援を目的としており、金額は少額(数万〜数百万円)な傾向がありますが、要件が比較的緩やかで、地域内企業のみが対象となるため競争率も低い傾向にあります。
- 国の補助金
以下の表は、それぞれの特徴を比較整理したものです。
| 比較項目 | 国の補助金 | 都道府県・自治体の補助金 |
|---|---|---|
| 主な管轄 | 経済産業省、中小企業庁、国土交通省 | 各都道府県庁、市区町村の産業振興課 |
| 予算規模 | 数百万円~数千万円(大型投資向け) | 数万円~数百万円(小規模改修・購入向け) |
| 対象エリア | 全国 | その自治体に事業所がある企業限定 |
| 競争率 | 高い(全国の企業と競合) | 比較的低い(地域内での競合) |
| 申請難易度 | 高い(詳細な事業計画書が必須) | 中~低(簡易な申請書で済む場合もある) |
| 主な目的 | 国の政策課題(DX、賃上げ、生産性向上) | 地域経済の活性化、地元雇用の維持、商店街支援 |
建設業が補助金活用に取り組むべきメリット
補助金を活用することは、単に資金を受け取るだけではない複合的なメリットがあります。
- 補助金活用の3つのメリット
- 返済不要の資金調達
融資とは異なり、原則として返済義務がありません(※一定以上の利益が出た場合の収益納付など例外あり)。自己資金の持ち出しを抑えながら、本来なら躊躇するような設備投資が可能になります。 - 対外的な信用力の向上
補助金に採択されるということは、行政から「事業計画の妥当性と実現可能性がある」と認められた証拠になります。この実績は金融機関からの融資審査や、元請け企業に対する信用力向上に寄与します。 - 生産性の向上と経営体質の強化
補助金を活用して最新の建機やICTツール(ドローン、測量機器、施工管理ソフトなど)を導入することで、業務効率化が進み、利益率の高い経営体質へと転換できます。
- 返済不要の資金調達
【目的別】建設業における主な国の補助金の種類
国が実施する補助金は、建設業の構造的な課題(生産性向上、事業承継、DXなど)を解決するための大型予算が組まれています。ここでは、建設業者が特によく利用する主要な制度を目的別に解説します。
設備投資や事業再構築に使える補助金
新しい重機の導入や、建設業から異業種への参入などを検討している場合に適した補助金です。
- ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
建設業において最もポピュラーな補助金の一つです。革新的なサービスの開発や生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援します。
活用例 :ICT建機の導入による施工精度の向上、3Dプリンタを用いた模型製作の内製化など。 - 事業再構築補助金
ポストコロナ社会の変化に対応するため、思い切った事業転換を支援する大型補助金です。
活用例:下請け中心の工務店が、自社ブランドの住宅販売事業へ進出する場合や、建設業の技術を活かしてキャンプ場運営を開始する場合など。
IT化・DX推進に使える補助金
2024年問題への対応として、業務効率化や長時間労働の是正を目指す建設業者に必須の補助金です。
- IT導入補助金
業務効率化や売上アップに繋がるITツールの導入費用の一部を補助します。ソフトウェア本体だけでなく、クラウド利用料や導入設定費用、一部ハードウェア(PCやタブレット)も対象になる枠があります。
活用例:施工管理システム、図面管理ソフト(CAD)、原価管理システム、勤怠管理システムの導入。
人材育成・環境改善に使える補助金
厳密には厚生労働省管轄の「助成金」ですが、建設業の人材不足解消のために広く利用されています。助成金は要件を満たせば受給できる確率が高いのが特徴です。
- キャリアアップ助成金
非正規雇用労働者(アルバイトや契約社員など)を正社員化したり、処遇改善を行ったりした場合に助成されます。 - 人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コースなど)
従業員に技術講習や特別教育を受けさせた際の経費や、その期間の賃金の一部を助成します。技能講習や免許取得にかかるコストを軽減できます。
表:建設業向け・国の主要補助金一覧
| 名称 | 対象経費の例 | 補助上限額(目安) | 補助率 |
|---|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 機械装置、システム構築費、運搬費 | 750万円~5,000万円(枠による) | 1/2 または 2/3 |
| 事業再構築補助金 | 建物費、機械装置、広告宣伝費 | 1,000万円~数千万円(枠による) | 1/3 ~ 2/3 など |
| IT導入補助金 | ソフトウェア費、クラウド利用料、PC | 数十万円~450万円 | 1/2 ~ 4/5 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓費(HP作成、チラシ)、機械装置 | 50万円~250万円 | 2/3 または 3/4 |
[出典:中小企業庁「ものづくり補助金総合サイト」、経済産業省「IT導入補助金公募要領」]

都道府県別・自治体独自の建設業向け補助金の特徴
47都道府県および各市区町村では、地域の特性や課題に合わせた独自の補助金制度を設けています。これらは国のような統一名称がないため見つけにくいですが、競争率が低く狙い目です。ここでは地域特性ごとの傾向と、代表的な事例を分類して解説します。
住宅リフォーム・省エネ改修に関する補助金
最も多くの自治体で実施されているのが、住宅の性能向上に関する補助金です。地元の工務店が施工を行うことが条件となるケースが多く、地域建設業者の受注支援としての側面があります。
- 概要
耐震改修、バリアフリー化、省エネ(ZEH・断熱)改修に対する補助。施主が申請者となる場合が多いですが、建設業者が提案することで受注に繋がります。 - 事例イメージ
東京都:「既存住宅における省エネ改修促進事業」など、高断熱窓・ドアへの改修に対し手厚い補助を実施。
地方都市:空き家リフォームに対し、工事費の一定割合を補助する制度(移住促進とセットでの運用)。
地域独自の課題解決型補助金(豪雪・林業など)
その地域の気候や産業構造特有の課題を解決するための制度です。自社の所在地ならではの制度がないか確認しましょう。
- 豪雪地帯(北海道・東北・北陸など)
除雪体制の維持が必須であるため、建設業者が除雪機械(ホイールローダー、ロータリー除雪車)を購入・更新する費用を補助する制度が多く見られます。
事例:北海道や新潟県の市町村による「除雪機械導入等事業補助金」など。 - 林業・木材産業が盛んな地域
地域産材(県産材・市産材)を一定以上使用した住宅建築に対し、施工業者や施主に補助金を上乗せする制度です。
事例:長野県や奈良県など、森林資源が豊富なエリアでの「地域産材利用促進事業」など。
販路拡大・地域経済活性化のための補助金
地元の建設業者が経営基盤を強化するための支援策です。
- 販路拡大支援
自社ホームページの作成・リニューアル費用、地域の産業展示会への出展費用に対する補助。多くの商工会議所や自治体の中小企業振興課が実施しています。 - 人材確保・定着支援
地元在住者を新たに雇用した場合の助成や、若手社員向けの奨学金返還支援制度を設けている自治体もあります。
都道府県・市区町村の補助金の探し方
自治体の補助金は年度ごとに予算が組まれ、募集期間が短い(1ヶ月程度)ことが多いため、こまめな情報収集が必要です。
- 効率的なリサーチ方法
- 「J-Net21」を活用する
中小企業基盤整備機構が運営する支援ポータルサイト。「支援情報ヘッドライン」から、都道府県別・目的別に補助金を検索できます。 - 商工会議所・商工会のHPを確認する
地元の商工会議所は、地域限定の補助金情報をいち早く掲載しています。経営指導員に直接相談するのも有効です。 - 自治体の「産業振興課」や「住宅課」をチェック
事業用は産業振興系の部署、住宅リフォーム系は住宅・都市計画系の部署が管轄していることが多いです。
- 「J-Net21」を活用する
補助金申請前に解消したい不安と注意点
補助金はメリットが大きい反面、特有のリスクや事務負担も伴います。申請前に以下の注意点を理解し、準備を整えておく必要があります。
補助金は「後払い」であるという資金繰りの注意
補助金申請における最大の誤解が「すぐにお金がもらえる」という点です。原則として補助金は「後払い(精算払い)」です。
- 交付決定通知を受け取る。
- 全額自己資金(または融資)で設備を購入・工事代金を支払う。
- 実績報告を行い、確定検査に合格する。
- 指定口座に補助金が入金される。
この間、数ヶ月から1年以上のタイムラグが発生します。そのため、工事代金を立て替えるための「つなぎ融資」や十分な手元資金の確保が必須です。
採択後の事務処理と報告義務の負担
補助金は採択されて終わりではありません。事業完了後も、通常3年~5年間の「事業化状況報告」が義務付けられています。
- 補助金で購入した設備でどれくらい利益が出たかを報告する。
- 一定以上の利益が出た場合、補助金の一部返還(収益納付)を求められる場合がある。
- 購入した設備を勝手に売却・廃棄することは禁止されており、処分制限期間中は厳格な資産管理が求められる。
課税対象となる場合と会計処理
受け取った補助金は、法人税法上「益金(雑収入)」として扱われるため、課税対象となります。補助金が入金された年度に利益が大きく跳ね上がると、その分税金も増えてしまいます。これを回避するために、「圧縮記帳」という会計処理を用いて、補助金相当額を固定資産の取得価額から減額し、課税を繰り延べる方法が一般的です。税理士と事前に相談しておくことが重要です。
建設業における補助金申請から受給までの流れ
補助金の申請プロセスは複雑ですが、一般的なフローを理解しておけばスムーズに進められます。ここでは「ものづくり補助金」などの標準的なフローを例に解説します。

情報収集から申請書類の作成まで
- 1. 公募要領の確認
対象経費や締め切り、審査項目を熟読します。 - 2. GビズIDプライムの取得
国の補助金申請は電子申請システム(jGrants)を使用するため、専用のアカウント取得が必要です(発行まで数週間かかる場合があります)。 - 3. 事業計画書の作成
「現状の課題」「導入する設備」「期待される効果(数値目標)」を論理的に記述します。認定支援機関(金融機関や税理士など)のサポートを受けることが一般的です。
採択決定から事業実施・実績報告まで
- 4. 交付申請・交付決定
採択された後、正式な見積書などを提出し「交付決定通知書」を受け取ります。 - 5. 発注・契約・納品・支払い
必ず「交付決定通知」の日付以降に発注を行ってください。それ以前の発注は対象外となります。支払いは原則銀行振込で行い、証拠を残します。 - 6. 実績報告
納品書、請求書、振込控、成果物の写真などを揃えて報告します。
確定検査から補助金の入金まで
- 7. 確定検査
提出した書類に不備がないか、事務局が審査します。必要に応じて実地検査が行われます。 - 8. 補助金額の確定・請求
確定通知書を受け取ったら、精算払請求書を提出します。 - 9. 入金
指定口座に補助金が振り込まれます。
表:申請から入金までのタイムライン目安
| ステップ | 所要期間の目安 | 建設業者がやるべきこと |
|---|---|---|
| 1. 計画・申請 | 公募開始~締切(1~2ヶ月) | GビズID取得、事業計画策定、認定支援機関との連携 |
| 2. 審査・採択 | 締切後 1~2ヶ月 | 採択結果の発表待ち |
| 3. 交付申請 | 採択後 1ヶ月以内 | 詳細な見積書提出、交付決定を待つ |
| 4. 事業実施 | 交付決定後 3~10ヶ月 | 発注・納品・支払い、証拠写真の撮影、帳票整理 |
| 5. 実績報告 | 事業完了後 1ヶ月以内 | 報告書の作成・提出 |
| 6. 入金 | 報告後 1~2ヶ月 | 入金確認、会計処理(圧縮記帳など) |
まとめ
建設業における補助金活用は、資材高騰や人材不足といった経営課題を解決し、企業の成長を加速させるための強力な手段です。数百万円以上の大規模な投資には「ものづくり補助金」などの国の制度を、地域密着のリフォームや小規模な改善には「自治体の補助金」を、というように使い分けることがポイントです。
ただし、補助金はあくまで「手段」であり、目的ではありません。また、後払いの原則や事務処理の負担といったリスクも存在します。自社の経営ビジョン(人・モノ・金)と照らし合わせ、適切なパートナー(認定支援機関や商工会議所)と協力しながら、戦略的に補助金を活用していきましょう。
Q1. 個人事業主(一人親方)でも申請できる補助金はありますか?
はい、ほとんどの補助金(ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金など)は、個人事業主も対象です。ただし、確定申告書や開業届の写しなどが必要になります。また、キャリアアップ助成金など一部の助成金は「雇用保険適用事業所」であることが条件となるため、従業員を雇っていない場合は対象外となることがあります。
Q2. 補助金の申請代行をコンサルタントに依頼するメリットは?
最大のメリットは「採択率の向上」と「手間の削減」です。プロのコンサルタントは審査員の視点を理解しており、説得力のある事業計画書の作成を支援してくれます。また、煩雑な電子申請や報告業務のサポートを受けることで、本業である工事や営業に集中できます。報酬は着手金+成功報酬型が一般的です。
Q3. 複数の補助金を同じ工事で重複して申請できますか?
原則として、同一の事業・同一の経費に対して、国や自治体の補助金を重複して受け取ることはできません。ただし、「重機の購入はA補助金」「HP作成はB補助金」のように、対象経費(使い道)を明確に分ければ、同じ時期に複数の補助金を申請・利用することは可能です。





