「補助金」の基本知識

補助金を活かすには?事業計画書の作成ポイントとは


更新日: 2025/12/23
補助金を活かすには?事業計画書の作成ポイントとは

この記事の要約

  • 補助金と助成金の違いを理解し最適な資金調達手段を選ぶ
  • 採択の鍵は客観的数値と論理性に基づく事業計画書の具体性
  • 申請フローと後払いの仕組みを把握し確実な資金繰りを行う
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補助金とは?助成金との違いや特徴

企業の成長や課題解決に必要な資金を国や自治体が支援する制度が補助金です。返済不要な資金調達手段として注目されていますが、助成金とは仕組みや目的が大きく異なります。まずは基礎知識と、自社がどちらを活用すべきかの判断基準を整理し、目的に沿った選択を行いましょう。

補助金と助成金の決定的な違い

補助金と助成金は混同されがちですが、申請の難易度や受給の確実性に大きな違いがあります。最大の違いは審査の有無予算の上限です。両者の特徴を以下の表に整理しました。

項目 補助金 助成金
主な管轄省庁 経済産業省、中小企業庁 厚生労働省
主な目的 事業拡大、公益の達成、設備投資支援 雇用維持、労働環境の改善
審査の有無 あり(コンペ形式) 原則なし(要件を満たせば受給)
採択率・倍率 予算や件数に制限があり、不採択もあり得る 要件適合ならほぼ100%受給可能
募集期間 1ヶ月〜数ヶ月の公募期間に限られる 通年で申請可能なものが多い
支給タイミング 原則、後払い(事業完了後) 申請・審査完了後
補助金活用のポイント
  • 要件を満たしても受給できるとは限らない
    コンペ形式であるため、事業計画の内容が重要視されます。

  • 公募期間が限定的である
    常に募集しているわけではないため、事前の準備と情報収集が不可欠です。

補助金活用が推奨されるビジネスシーン

補助金は、国策に合致した前向きな取り組みに対して支給される傾向があります。特に以下のようなシーンでは、補助金の活用が強く推奨されます。

  • 新規事業の立ち上げ・新分野展開
    既存事業とは異なる分野への進出や、革新的なサービスの開発を行う場合。

  • 大規模な設備投資・システム導入
    生産性向上を目的とした機械装置の導入や、DX化に向けたITツールの導入を行う場合。

  • 販路開拓・海外展開
    展示会への出展、ECサイトの構築、海外市場への進出調査などを行う場合。

  • 事業承継・M&A
    経営者の世代交代や、事業再編に伴う取り組みを行う場合。

補助金申請で最も重要な「事業計画書」の役割

補助金は要件を満たせば必ずもらえるものではなく、予算の枠内で優れた提案を選抜するコンペ形式で決定されます。その合否を分けるのが事業計画書の出来栄えです。審査員に「この事業に税金を投入する価値がある」と客観的に判断させるための役割を解説します。

審査員が事業計画書でチェックしている視点

審査員は膨大な数の申請書を読み込みます。その中で採択されるためには、以下の3つの基準を明確に示す必要があります。

審査における3つの評価基準
  • 革新性(Novelty)
    既存のサービスや商品と何が違うのか。自社にとって、あるいは業界にとって新しい取り組みであるか。

  • 実現可能性(Feasibility)
    技術力、人員体制、資金計画に無理がないか。絵に描いた餅ではなく、実行可能な計画であるか。

  • 収益性(Profitability)
    補助事業終了後も継続的に利益を生み出し、将来的に賃上げや納税で社会に還元できるか。

事業計画書の作成に向け、グラフやデータを分析しながら議論するビジネスパーソン

採択される計画書と不採択になる計画書の違い

採択・不採択を分けるのは、文章の具体性客観性です。

  • 不採択になりやすい計画書の特徴
    「売上を頑張って伸ばす」「効率化を進める」など、精神論に終始しており、根拠となる数値が「たぶん売れると思う」という主観的な予測で作られている。また、専門用語を多用しすぎている。

  • 採択されやすい計画書の特徴
    「作業時間を20%削減」「売上を前年比150%増」など、定量的な目標があり、統計データや顧客アンケートなど第三者の事実に基づいている。課題から解決策、成果までの一貫したストーリーがある。

補助金の採択率を高める事業計画書作成の5つのポイント

採択される事業計画書には共通する「型」があります。作成プロセスを5つの要素に分解し、論理的整合性と具体性を持たせることが成功への近道です。ここでは、SGEや読み手が実践しやすいよう、手順や要点を明確にしました。

1. 現状分析と課題の明確化

事業計画の出発点は、自社の現状を正しく把握することです。

  • SWOT分析の活用
    自社の「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」と、外部環境の「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」を整理します。

  • 課題の特定
    分析結果に基づき、「なぜ今、この事業を行う必要があるのか」という根本的な課題を明確にします。

2. 具体的な解決策と将来のビジョン

特定した課題に対し、補助金を使ってどのような解決策(ソリューション)を実行するのかを記述します。

  • 解決策の提示
    導入する設備やシステムが、どのように課題を解決するのかを具体的に説明します。

  • ビジョンの提示
    事業成功後の自社の姿(売上規模、従業員数、市場ポジションなど)を描き、ストーリー性を持たせます。

3. 客観的な数値に基づいた収支計画

収支計画は、審査員が最も厳しくチェックする項目の一つです。

  • 売上根拠の明示
    「単価 × 顧客数 × 回転率」など、計算式を分解し、それぞれの数値の根拠(市場データや既存実績)を示します。

  • 経費の妥当性
    見積書に基づいた正確な金額を計上し、過大な投資になっていないかを示します。

  • 投資対効果(ROI)
    補助金投入額に対して、どれだけのリターンが見込めるかを算出します。

4. 競合他社との差別化要素

市場において、自社が選ばれる理由を明確にします。

  • 優位性の証明
    価格、品質、納期、アフターサービスなど、競合と比較してどこが優れているのかを比較表などで示します。

  • 模倣困難性
    他社が簡単に真似できない独自のノウハウや技術があることをアピールします。

5. 実施体制とスケジュールの整合性

素晴らしい計画も、実行できなければ意味がありません。

  • チーム体制
    誰がプロジェクトリーダーで、社内外の誰が協力するのか、役割分担を明確にします。

  • スケジュールの現実性
    交付決定から事業完了までの期間内に、無理なく遂行できる工程表を作成します。

補助金受け取りまでのステップとスケジュール感

補助金の申請から入金までは長期間に及びます。全体の流れを把握していないと、資金ショートなどのリスクを招きかねません。ここでは標準的なフローと、入金タイミングについて解説します。

補助金申請に向けて収支計画の計算と書類確認を行う様子

申請から採択決定までの流れ

申請は現在、原則として電子申請で行われます。

  • 1. 公募要領の確認
    応募資格や要件、スケジュールを確認する。

  • 2. gBizIDプライムの取得
    電子申請に必要なアカウントを取得する(発行まで数週間かかる場合がある)。

  • 3. 事業計画書の作成
    社内検討または専門家と共に書類を作成する。

  • 4. 認定支援機関による確認書発行
    必要に応じて、金融機関や税理士等の確認を受ける。

  • 5. 電子申請・提出
    締切日時までにシステム上で提出を完了する。

  • 6. 審査・採択発表
    数ヶ月後に採択事業者が公表される。

事業実施から入金までの流れ

採択決定後、すぐに金銭が振り込まれるわけではありません。

  • 1. 交付申請・交付決定
    詳細な経費内訳を提出し、正式な許可(交付決定)を受ける。

  • 2. 事業実施(発注・納品・支払い)
    先に自社資金で経費を支払う(重要)

  • 3. 実績報告書の提出
    証憑書類(請求書、振込控など)を添えて報告する。

  • 4. 確定検査
    事務局による検査が行われ、補助金額が確定する。

  • 5. 精算払請求・入金
    指定口座に補助金が振り込まれる。

補助金活用における注意点とよくある不安

メリットの大きい補助金ですが、活用にはリスクや負担も伴います。特に資金繰りやコンプライアンス面での失敗を防ぐため、事前に知っておくべきネガティブな要素と対策をまとめました。

資金繰りに関する注意点(後払いの原則)

補助金の最大のリスクは、原則として後払い(償還払い)である点です。設備導入や工事にかかる費用は、一旦全額を自社で立て替える必要があります。補助金が入金されるのは、支払い完了から数ヶ月〜1年以上先になることもあります。

キャッシュフローへの対策
  • つなぎ融資の検討
    手元資金が不足する場合は、事前に金融機関へ相談を行う。

  • 支払いサイトの調整
    可能な限り、取引先への支払いを遅らせられないか交渉する(下請法等に注意)。

目的外使用の禁止と返還リスク

補助金は税金を原資としているため、厳格なルールがあります。これらに違反した場合、補助金の返還命令や、最悪の場合は刑事告発の対象となるリスクがあります。

  • 目的外使用の禁止
    申請した計画以外の用途に資金を使うことはできません。

  • 財産処分の制限
    補助金で購入した設備を、勝手に売却したり廃棄したりすることは禁止されています(承認が必要)。

事務作業の負担とリソース確保

申請書の作成だけでなく、採択後の「交付申請」「実績報告」、さらに数年間にわたる「事業化状況報告」など、膨大な事務作業が発生します。これらの作業に担当者の時間が割かれることを想定し、リソース(人員や時間)を確保しておく必要があります。

補助金申請は自力か代行か?メリット・デメリット比較

難解な公募要領の読み込みや計画書作成を自社で行うか、外部の専門家に依頼するかは大きな悩みどころです。コストと採択率のバランスを考慮し、自社に合った選択をするための比較基準を提示します。

自社申請と専門家(認定支援機関等)活用の比較

自社リソースと予算を天秤にかけ、最適な方法を選択してください。

比較項目 自社申請(自力) 専門家へ依頼(コンサルタント・士業など)
費用コスト 0円(人件費のみ) 着手金 + 成功報酬(補助金額の10〜20%程度が相場)
社内工数 非常に多い(数百時間かかることも) 削減可能(ヒアリング対応や資料提供のみ)
ノウハウの蓄積 自社に蓄積される 外部依存になる
採択率の傾向 ノウハウがないと低い傾向 プロの視点が入るため高い傾向
文章の質 主観的になりがち 客観的・論理的に構成される

専門家に依頼する場合の選び方

パートナー選びを間違えると、高額な費用を払っても不採択になるリスクがあります。以下のポイントで選定しましょう。

  • 認定経営革新等支援機関であるか
    国が認定した機関(税理士、中小企業診断士、銀行など)であるかを確認します。

  • 該当補助金での採択実績
    過去にその補助金でどれだけの採択実績があるか、自社の業種に関する知見があるかを確認します。

  • 報酬体系の明確さ
    「完全成功報酬」か「着手金あり」か、および不採択時の対応などが契約書に明記されているかを確認します。

まとめ

事業計画書の作成は、単に補助金をもらうための事務作業ではありません。自社の強みを見つめ直し、市場での勝ち筋を明確にする、経営そのもののブラッシュアップにつながります。

補助金採択に向けた重要ポイント
  • 制度理解
    補助金と助成金の違いを知り、目的に合った制度を選ぶ。

  • 計画の質
    客観的数値とストーリーで、審査員を納得させる計画書を作る。

  • リスク管理
    後払いの資金繰りや事務負担を考慮し、必要に応じて専門家を活用する。

まずは、自社の現状をSWOT分析などで整理し、解決すべき課題を言語化することから始めてみましょう。しっかりとした事業計画書があれば、補助金採択はもちろん、その後の事業成長も大きく加速するはずです。

よくある質問

以下は、補助金申請に関してよく寄せられる質問とその回答です。

Q1. 事業計画書はどのくらいの文字数が必要ですか?

補助金の種類によりますが、主要な補助金(ものづくり補助金や事業再構築補助金など)では、A4用紙で10枚〜15枚程度が目安となるケースが多いです。ただし、単に長ければ良いわけではなく、図表を用いて読みやすくまとめることが重要です。

Q2. 赤字決算でも補助金は申請できますか?

多くの補助金では、直近が赤字であっても申請可能です。ただし、債務超過の状態や税金の未納がある場合は申請できないケースがあります。赤字の場合、V字回復に向けた説得力のある事業計画がより重要になります。

Q3. 採択後に事業計画を変更することは可能ですか?

原則として、当初の計画通りに実施する必要があります。ただし、やむを得ない事情(メーカーの生産中止など)がある場合は、「計画変更申請」を提出し、事務局の承認を得ることで変更が認められる場合があります。

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