「補助金」の基本知識

【建設業向け】補助金の事前準備でやるべきこととは?一覧で紹介


更新日: 2025/12/11
【建設業向け】補助金の事前準備でやるべきこととは?一覧で紹介

この記事の要約

  • 採択の鍵は早期のGビズID取得と具体的事業計画の策定にある
  • 設備投資や販路開拓など自社課題に合致した補助金選定が重要
  • 申請リソースとコストを比較し自社対応か専門家依頼か決める
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建設業が補助金申請で成果を出すために事前準備が絶対に必要な理由

補助金の申請は、単に書類を埋めて提出すれば完了する事務作業ではありません。特に建設業においては、天候や工期に左右される現場業務と並行して厳格な手続きを進める必要があり、準備不足は採択率の低下だけでなく、本業への支障を招く恐れがあります。ここでは、なぜ「とりあえず申請」ではなく、計画的な事前準備が不可欠なのか、その根拠を構造的に解説します。

採択率を左右するのは「事業計画」の具体性

補助金審査において最も重視されるのは、提出された書類の整合性と実現可能性です。単に「新しい重機が欲しい」という要望だけでは採択されません。「その設備を導入することで、具体的にどれだけの生産性が向上し、利益がどう変化するのか」という数値的根拠に基づいた事業計画が必要です。この計画策定には、現状の経営数値の分析や市場調査が必要であり、直前の準備では間に合わないケースが大半です。

事業計画に求められる要素
  • 数値的根拠の提示
    導入前後の売上・利益・生産性指標(付加価値額など)を具体的な数値で比較する必要があります。

  • 市場ニーズとの整合性
    自社の強みと市場の機会(SWOT分析など)を照らし合わせ、その事業が成功する蓋然性を論理的に説明します。

  • 実現可能性のあるスケジュール
    資金調達方法や実施体制が具体的であり、絵に描いた餅ではないことを証明する必要があります。

申請期限から逆算したスケジュール管理の重要性

多くの補助金には公募期間が設けられていますが、公募開始から締切までの期間は1ヶ月〜2ヶ月程度と短い場合があります。この期間内に、必要書類(納税証明書や決算書など)の収集、事業計画の策定、電子申請システムの操作をすべて完了させなければなりません。事前準備ができていないと、書類の不備やシステムトラブルに対応できず、申請自体を断念せざるを得ないリスクがあります。

建設業におすすめの主な補助金一覧とそれぞれの特徴

建設業が活用できる補助金は多岐にわたりますが、自社の目的に合致しない制度に応募しても採択される可能性は低くなります。SGE(検索体験)においても、目的に応じた補助金の使い分けは重要なトピックです。ここでは建設業で採択実績の多い主要な補助金を整理し、それぞれの特徴と活用イメージを解説します。

補助金の申請に向けて事業計画書や必要書類を確認し合う建設業の担当者と専門家

表:建設業向け主要補助金の比較一覧

補助金名称 主な対象経費 補助上限額の目安 建設業での活用イメージ
IT導入補助金 ソフトウェア費、クラウド利用料、PC・タブレット等 数十万〜450万円 図面管理ソフト、原価管理システム、ドローン測量ソフトの導入による業務効率化。
事業再構築補助金 建物費、機械装置費、広告宣伝費 1,000万〜数千万円 建設業から不動産業への進出、古民家再生事業、リフォーム事業への本格参入など。
ものづくり補助金 機械装置・システム構築費 750万〜数千万円 高機能なICT建機の導入、3Dプリンタを用いた建築部材の製造など、革新的な生産性向上。
小規模事業者持続化補助金 広告宣伝費、店舗改装費 50万〜200万円 自社ホームページの作成、チラシ配布、看板設置による地域顧客の販路開拓。

[出典:中小企業庁 各種補助金公募要領]

IT導入補助金(業務効率化・DX推進)

IT導入補助金は、建設業における長時間労働の是正や生産性向上を目的としたITツールの導入を支援するものです。勤怠管理システムやCADソフトなどが対象となり、インボイス制度対応の会計ソフト導入にも活用されています。

事業再構築補助金(新分野展開・業態転換)

事業再構築補助金は、ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、思い切った事業転換を支援する制度です。例えば、新築請負メインの工務店が、空き家を活用した宿泊施設運営を始める場合などが該当します。建物改修費が補助対象になる点が大きな特徴です。

ものづくり補助金(革新的なサービス・設備投資)

ものづくり補助金は、革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための中小企業を支援します。建設業では、レーザースキャナやドローン、ICT対応重機などの高額な設備投資によく利用されます。

小規模事業者持続化補助金(販路開拓)

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者(建設業の場合は従業員20名以下)が経営計画を作成して取り組む販路開拓を支援します。申請書類が比較的簡易であり、Webサイト制作やチラシ作成など、地域密着型の建設業者にとって使い勝手の良い制度です。

【チェックリスト】補助金の申請に向けて建設業がやるべき事前準備

補助金申請をスムーズに進めるためには、具体的なアクションプランが必要です。ここでは、どの補助金を申請する場合でも共通して必要となる「事前準備」をリスト形式で解説します。これらは公募が開始される前から着手できるため、早期に取り組むことを推奨します。

事前準備チェックリスト
  • 「GビズIDプライム」アカウントの早期取得
  • 直近の決算書と納税証明書の整理・確認
  • 自社の課題の棚卸しと事業計画の構想(ビジョン)
  • 認定経営革新等支援機関(パートナー)の選定

「GビズIDプライム」アカウントの早期取得

現在、国が実施する補助金のほとんどは「jGrants(Jグランツ)」というシステムを使った電子申請が基本です。この利用には「GビズIDプライム」アカウントが必須ですが、発行には印鑑証明書の郵送などが必要で、申請から発行まで2週間〜1ヶ月程度かかる場合があります。公募締切直前に取得しようとしても間に合わないため、最優先で取得してください。

直近の決算書と納税証明書の整理・確認

申請時には、企業の財務状況を証明する書類が必ず求められます。

  • 決算書一式
    直近2期〜3期分の貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書、個別注記表などを用意します。

  • 納税証明書
    税務署が発行する納税証明書(その1、その2など指定されたもの)です。未納や滞納がある場合は申請できないため、速やかに解消する必要があります。

自社の課題の棚卸しと事業計画の構想(ビジョン)

「なぜ補助金が必要なのか」というストーリーを構築します。単に「機械が古いから」ではなく、経営課題と結びつけた論理展開が必要です。

建設現場でタブレット端末を操作し業務効率化を図る現場監督

  • 課題の明確化
    例:「職人の高齢化が進んでいるため、ICT建機を導入して若手でも施工可能な体制を作りたい」「資材高騰に対応するため、原価管理システムで利益率を改善したい」など。

  • 投資対効果の試算
    その投資によって、売上や利益がどう伸びるのか、具体的な見通しを立てておきます。

認定経営革新等支援機関(パートナー)の選定

一定額以上の補助金申請では、金融機関や商工会議所、税理士などの「認定経営革新等支援機関」による確認書が必要です。また、複雑な申請書類を自社だけで作成するのは困難な場合が多いため、信頼できるパートナーを早めに見つけ、相談を開始してください。

補助金申請に関して建設業者が抱きがちな不安と解決策

補助金活用にはメリットがある一方で、現場を持つ建設業者特有の不安や懸念も存在します。ここでは、よくある不安要素とその解決策を提示し、リスクを最小限に抑える方法を解説します。

書類作成の手間と現場業務への影響

「現場が忙しくて、膨大な書類を作る時間がない」という点は、多くの建設業経営者が抱える悩みです。

解決策:外部専門家の活用

すべてを自社で行おうとせず、行政書士や中小企業診断士などの外部専門家を活用することが有効です。ヒアリングを受けるだけで書類作成を代行してもらえるサービスもあるため、経営者は「事業の方向性決定」に集中し、実務的な負担を軽減することが可能です。

資金繰りと「後払い」のリスク管理

「補助金でお金が入るから大丈夫」と考えて高額な設備投資を行うのは危険です。補助金は原則として、経費を全額支払った後に、実績報告を経てから入金される「後払い」の仕組みです。

解決策:つなぎ融資と資金計画

申請から実際の入金までには1年以上かかるケースもあります。そのため、事前に金融機関と相談し、入金までの「つなぎ融資」を確保しておくか、十分な手元資金を用意する資金計画が必須となります。

補助金申請は自社で行うか専門家に依頼するか【比較検討】

補助金申請は自社単独で行うことも可能ですが、難易度やリソースに応じて専門家への依頼を検討すべきです。自社申請と専門家依頼、それぞれのメリット・デメリットを比較します。

表:自社申請と専門家依頼の比較

比較項目 自社申請 専門家(コンサルタント)依頼
費用 0円(人件費は除く) 有料(着手金+成功報酬10〜20%程度が相場)
手間(社内工数) 非常に多い(公募要領の読解、書類作成などすべて) 少ない(ヒアリング対応や資料提供のみ)
採択の可能性 ノウハウがない場合、低くなりやすい 採択されるための論理構成に精通しており、高い
スピード感 通常業務と兼任のため遅れがち 専任で対応するためスムーズ

自社申請が向いているケース

  • 申請内容が簡易な場合
    小規模事業者持続化補助金など、書類枚数が比較的少ない補助金であれば、自社での対応も現実的です。

  • 事務担当者が確保できる場合
    公募要領を読み込み、電子申請システムを操作できる事務担当者が社内にいる場合は、コストを抑えられます。

専門家(コンサルタント)への依頼が向いているケース

  • 申請金額が大きく難易度が高い場合
    事業再構築補助金やものづくり補助金など、高度な事業計画書(10〜15枚程度)が求められる場合は、プロの支援が推奨されます。

  • 本業が多忙な場合
    社長や担当者が現場に出ており、デスクワークの時間が取れない場合は、機会損失を防ぐためにアウトソーシングすべきです。

まとめ

本記事では、建設業が補助金を活用するために必要な事前準備について解説しました。補助金は、建設業の課題である「人手不足解消」「生産性向上」「新分野展開」を強力に後押しするツールです。しかし、準備不足のまま進めると不採択になるリスクが高く、無駄な労力となってしまいます。

まず行うべきことは以下の2点です。

  • 「GビズIDプライム」の取得申請を行う
  • 自社の課題を明確にし、どの補助金が使えるか検討をつける

早期の準備こそが、補助金採択への一番の近道です。まずは公募要領を確認するか、身近な支援機関へ相談することから始めてください。

補助金に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 赤字の建設会社でも補助金は申請できますか?

多くの補助金で申請可能です。ただし、直近が赤字や債務超過の場合、審査項目において財務状況の評価が低くなる可能性があります。その分、実現可能性の高い事業計画書(V字回復のシナリオ)を作成し、審査員を説得する必要があります。金融機関からの支援確約書などがプラスに働く場合もあります。

Q2. 個人事業主の一人親方でも申請対象になりますか?

はい、対象になります。特に「小規模事業者持続化補助金」や「IT導入補助金」などは、多くの個人事業主(一人親方)が活用しています。ただし、確定申告書や納税証明書などの書類が整っていることが条件であり、開業届を出していない場合などは対象外となることがあります。

Q3. 補助金が入金されるのはいつ頃ですか?

原則として、事業期間終了後に「実績報告書」を提出し、事務局の「確定検査」に合格してから数ヶ月後になります。交付決定(採択)から入金までは、早くて半年、長いものでは1年〜1年半ほどかかるケースも多いため、資金繰り計画は慎重に行う必要があります。

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