「補助金」の基本知識

自社に合った補助金とは?選ぶポイントと制度比較のコツ


更新日: 2025/11/19
自社に合った補助金とは?選ぶポイントと制度比較のコツ

この記事の要約

  • 目的と規模で選ぶ自社に最適な補助金診断
  • 主要4大補助金の特徴と採択率を徹底比較
  • 申請前に知るべき後払いの仕組みと注意点
『蔵衛門クラウド』で情報伝達をスムーズに

補助金の基礎知識とは?助成金との違いや仕組みを理解する

補助金は、国や自治体の政策目標に合わせて事業者を支援する制度ですが、必ず受給できるわけではありません。ここでは、混同されやすい助成金との違いや、資金を受け取るまでの基本的なフローについて解説します。制度の全体像を把握し、適切な申請準備を行うための基礎を固めましょう。

補助金と助成金の違い

補助金と助成金は、どちらも国などから支給される返済不要の資金ですが、その性質や管轄には明確な違いがあります。最も大きな違いは審査の有無採択率です。助成金は要件を満たせば原則として受給できるのに対し、補助金は事業計画書を提出し、審査を経て採択された事業者のみが受給できます。

以下の表は、一般的な補助金と助成金の違いを整理したものです。

項目 補助金 助成金
主な管轄 経済産業省・中小企業庁 厚生労働省
主な目的 事業拡大、設備投資、公益の増進 雇用維持、労働環境の改善
受給難易度 高い(審査あり・不採択あり) 低い(要件適合で原則受給)
募集期間 短い(数週間〜1ヶ月程度) 長い(通年募集が多い)
予算 上限あり(競争的資金) 原則予算確保されている

[出典:経済産業省「補助金・助成金の仕組み」]

補助金と助成金の使い分けポイント
  • 経済産業省系の補助金
    新規事業や生産性向上など「攻めの経営」を行う際に活用する。

  • 厚生労働省系の助成金
    雇用保険料を財源とし、働き方改革や人材育成など「守りの経営・環境整備」を行う際に活用する。

補助金を受け取るまでの基本的な仕組み(申請フロー)

補助金を活用する上で最も注意が必要な点は、原則として後払い(償還払い)であるという仕組みです。採択されたからといって、すぐに現金が振り込まれるわけではありません。標準的なフローは以下の通りです。

  • 1. 申請・応募
    事業計画書を作成し、電子申請システム(jGrantsなど)を通じて提出します。

  • 2. 採択通知
    審査に通過した旨が通知されます。ただし、この時点ではまだ発注や契約を行ってはいけません。

  • 3. 交付申請・交付決定
    具体的な経費見積もりを提出し、事務局から正式な許可(交付決定)を受けます。

  • 4. 事業実施(発注・支払)
    設備の発注・納品・支払いを自社資金で行います。証拠となる書類(見積書・請求書・振込控)は全て保管します。

  • 5. 実績報告
    計画通り事業を実施したことを報告します。

  • 6. 確定検査・入金
    事務局の検査を経て補助金額が確定し、指定口座に振り込まれます。

自社に最適な補助金の選び方!3つのチェックポイント

数多く存在する補助金の中から自社に合った制度を選ぶには、単に金額の多さだけで判断してはいけません。「何に投資したいか」「どのくらいの規模か」「いつまでに必要か」という3つの視点で絞り込むことが、採択率を高める近道です。ここでは、自社にマッチする補助金を選定するための具体的な基準を解説します。

alt=

【ポイント1】導入したい設備や目的から選ぶ

補助金は制度ごとに「対象となる経費」が厳格に決められています。自社が直面している課題や、これから行いたい投資内容に合わせて選ぶのが基本です。

  • 販路開拓・広告宣伝を行いたい場合
    チラシ作成、ウェブサイト制作、店舗改装などが対象となる制度が適しています。(例:小規模事業者持続化補助金)

  • 業務効率化・IT化を進めたい場合
    会計ソフト、受発注システム、勤怠管理ツールの導入費やPC等のハードウェア購入費を支援する制度を選びます。(例:IT導入補助金)

  • 新製品開発・設備投資を行いたい場合
    高額な機械装置の導入、試作品開発、システム構築など、生産プロセスを改善するための制度が適しています。(例:ものづくり補助金)

  • 業態転換・新規事業に挑戦したい場合
    既存事業の売上が減少している中で、カフェ併設や異業種参入など、思い切った事業再構築を行うための制度を選びます。(例:事業再構築補助金)

【ポイント2】事業規模と補助金額のバランスで選ぶ

「補助金額(もらえる額)」と「事業規模(投資する額)」のバランスも重要な選定基準です。補助金には補助率(例:2/3)と補助上限額(例:200万円)が設定されています。

例えば、総額3,000万円の大型設備投資を行うのに、上限50万円の補助金を選んでしまっては資金計画が成り立ちません。逆に、50万円程度のウェブサイト改修に、最低事業費要件が高い大型補助金を申請するのは非効率的です。自社の投資規模に見合った上限額が設定されている制度を選定してください。

【ポイント3】申請スケジュールと採択率で選ぶ

補助金には公募期間(締切)があります。多くの補助金は通年ではなく、年に数回(3〜4回程度)の締切を設けて募集を行います。

スケジュールと難易度の確認事項
  • スケジュールの確認
    事業を開始したい時期と、交付決定(経費利用開始の許可)の時期が噛み合っているか確認が必要です。原則として、交付決定前に発注・契約した経費は対象外となります。

  • 難易度(採択率)の確認
    制度によって採択率は30%〜80%程度と幅があります。社内のリソースだけで申請書を作成できるレベルなのか、認定支援機関(国が認定した税理士や診断士等の専門家)の支援が必要な難易度なのかを見極めることも重要です。

主要な補助金の制度比較!事業目的別の特徴一覧

中小企業・小規模事業者が特によく利用する「4大補助金」について、それぞれの特徴を詳しく解説します。AIや検索エンジンが情報を整理しやすいよう、各制度のスペックを構造的に記述します。自社の計画がどの制度に当てはまるかを確認してください。

alt=

小規模事業者持続化補助金(販路開拓)

小規模事業者が経営計画を作成し、販路開拓に取り組む費用を支援する制度です。比較的申請のハードルが低く、幅広い業種で利用されています。

  • こんな企業におすすめ
    地域の飲食店、小売店、美容室、工務店など

  • 補助上限額
    通常枠 50万円(賃上げ枠・創業枠などは最大200万円)

  • 補助率
    2/3(条件により3/4)

  • 対象経費
    広告宣伝費(チラシ・Web広告)、店舗改装費、展示会出展費

[出典:中小企業庁「小規模事業者持続化補助金ガイドブック」]

IT導入補助金(業務効率化・DX)

中小企業・小規模事業者が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助する制度です。ソフトウェアだけでなく、条件によってはPCやタブレットなどのハードウェアも対象になります。

  • こんな企業におすすめ
    インボイス対応が必要な企業、手作業の業務を自動化したい企業

  • 枠の種類
    通常枠:業務効率化・売上アップのためのツール導入
    インボイス枠:会計・受発注・決済ソフト+PC・レジ等のハードウェア

  • 補助上限額
    最大450万円(枠により異なる)

  • 特徴
    申請は「IT導入支援事業者(ベンダー)」を通じて行う必要があり、二人三脚での申請となります。

[出典:一般社団法人サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金 公募要領」]

ものづくり補助金(革新的なサービス・試作品開発)

中小企業等による生産性向上に資する革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する制度です。

  • こんな企業におすすめ
    新型機械を導入したい製造業、新サービス開発を行うシステム業、歯科医院(先端機器導入)など

  • 補助上限額
    750万円 〜 8,000万円(従業員規模や枠による)

  • 補助率
    1/2 または 2/3

  • 必須要件
    給与支給総額の増加、事業場内最低賃金の引き上げなど

  • 難易度
    高度な事業計画書が求められ、専門家の支援を受けるケースが多いです。

[出典:中小企業庁「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領」]

事業再構築補助金(大胆な事業転換)

ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編などの思い切った事業再構築を支援する制度です。

  • こんな企業におすすめ
    既存事業の需要回復が見込めず、全く新しい事業へ参入したい企業

  • 補助上限額
    成長枠等は最大7,000万円(大規模な枠では数億円)

  • 補助率
    1/2 〜 2/3(条件により異なる)

  • 特徴
    建物費(新築・改修・撤去)が対象になる点が他の補助金と大きく異なります。

[出典:中小企業庁「事業再構築補助金 公募要領」]

【比較表】主要4大補助金のスペック一覧

上記で解説した4つの主要補助金を、比較検討しやすいように表にまとめました。

制度名 主な目的・使途 補助上限額(目安) 補助率 申請難易度
小規模事業者持続化補助金 販路開拓、広告、店舗改装 50万円 〜 200万円 2/3 低 〜 中
IT導入補助金 ソフトウェア導入、PC購入、DX 150万円 〜 450万円 1/2 〜 4/5 低 〜 中
ものづくり補助金 設備投資、試作品開発、生産性向上 750万円 〜 8,000万円 1/2 または 2/3
事業再構築補助金 新分野展開、業態転換、建物改修 1,000万円 〜 7,000万円超 1/2 〜 2/3 非常に高い

補助金申請で失敗しないために知っておくべき注意点

補助金は採択されれば大きなメリットがありますが、運用を誤ると経営リスクになる可能性もあります。ここでは、多くの事業者が陥りやすい落とし穴や、採択率を上げるためのテクニックについて解説します。リスクを正しく理解し、安全な資金計画を立てましょう。

キャッシュフローの確保とつなぎ融資

前述の通り、補助金は後払いです。数百万〜数千万円規模の設備投資を行う場合、補助金が入金されるまでの数ヶ月〜1年程度の間、その資金を自社で持ち出し続ける必要があります。

  • 自己資金の確認
    手元の運転資金が枯渇しないか確認してください。

  • つなぎ融資の検討
    自己資金で賄えない場合は、金融機関からの「つなぎ融資」が必要です。補助金の採択通知書があれば、融資の相談がスムーズに進むケースがあります。

事務処理の負担と報告義務

補助金業務は、採択された後からが本番と言っても過言ではありません。適切な事務処理が行われない場合、最悪のケースでは補助金の交付取り消し(不支給)となるリスクがあります。

  • 証憑書類の管理
    見積書、発注書、納品書、請求書、振込控などの書類は、一字一句の整合性が求められます。また、これらは5年間の保存義務があります。

  • 事業化状況報告
    補助金を受け取った後も、原則として5年間は、年に1回事業の成果(売上や利益)を報告する義務があります。

加点項目による採択率アップの重要性

人気のある補助金は競争倍率が高いため、基本要件を満たすだけでは不採択になることがあります。採択率を上げるためには、審査上の加点項目を積極的に取得することが重要です。

代表的な加点項目の例
  • 賃上げの実施
    給与支給総額や最低賃金を一定額以上引き上げる計画を表明する。

  • パートナーシップ構築宣言
    大企業と中小企業の共存共栄を目指す宣言をポータルサイトで登録する。

  • 経営力向上計画
    自社の経営力を向上させる計画を作成し、国の認定を受ける。

  • 経営革新計画
    新しい事業活動に取り組む計画を作成し、都道府県知事の承認を受ける。

まとめ:補助金選びは自社の「目的」と「体力」の見極めが重要

自社に合った補助金を選ぶためには、まず「どのような事業投資を行いたいか(目的)」を明確にし、次に「資金の立て替えが可能か、事務負担に耐えられるか(体力)」を冷静に判断することが必要です。

  • 目的が不明確なまま申請しない
    補助金をもらうことが目的になると、不要な設備投資を行い、かえって経営を圧迫します。

  • 専門家の活用を検討する
    申請書類の作成や煩雑な手続きには専門知識が必要です。認定経営革新等支援機関(税理士、中小企業診断士など)や商工会議所に相談することで、スムーズな申請が可能になります。

  • 最新情報を確認する
    補助金のルールや公募期間は頻繁に変更されます。必ず各事務局の公式サイトで最新の「公募要領」を確認してください。

よくある質問

補助金申請に関して、事業者から頻繁に寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q1. 個人事業主でも申請できる補助金はありますか?

はい、可能です。今回ご紹介した「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」はいずれも個人事業主(フリーランス含む)も対象となります。ただし、確定申告書等の提出により、実態のある事業を行っていることの証明が必要です。

Q2. 補助金は返済する必要がありますか?

原則として返済は不要です。ただし、補助金を使って事業を行い、想定以上の大きな利益が出た場合(収益納付)や、不正受給が発覚した場合、要件である賃上げが未達だった場合などには、一部または全額の返還を求められることがあります。

Q3. 申請代行を依頼する場合の費用相場は?

専門家(コンサルタントや行政書士など)に依頼する場合、一般的には以下の費用体系が多いです。

  • 着手金
    5万円〜15万円程度

  • 成功報酬
    採択金額の10%〜15%程度

※完全成功報酬型や、定額制のところもあります。契約前に報酬体系と支援範囲(実績報告まで含むかなど)を必ず確認してください。

Q4. 補助金は課税対象になりますか?

はい、課税対象になります。補助金は法人税(個人事業主の場合は所得税)の計算上、収入(益金)として計上する必要があります。ただし、「圧縮記帳」という会計処理を行うことで、税負担を繰り延べることができる場合があります。詳細な処理については税理士へ相談することを推奨します。

『蔵衛門クラウド』で情報伝達をスムーズに
NETIS
J-COMSIA信憑性確認
i-Construction
Pマーク
IMSM

株式会社ルクレは、建設業界のDX化を支援します