「サステナビリティ」の基本知識

建設業の産業廃棄物削減とは?再資源化の方法を紹介


更新日: 2025/12/04
建設業の産業廃棄物削減とは?再資源化の方法を紹介

この記事の要約

  • 建設廃棄物の削減はサステナビリティ経営とコストダウンに直結
  • 3Rと徹底した分別解体で現場の資源循環を効率化する
  • 優良な処理業者との連携が法的リスク回避とブランド向上を導く
『蔵衛門クラウド』で情報伝達をスムーズに

建設業におけるサステナビリティと産業廃棄物の現状

建設業界において、サステナビリティ(持続可能性)への取り組みは急務となっています。建設活動は資源を大量に消費し、多くの廃棄物を排出する産業構造にあるため、環境負荷低減への責任が重くのしかかります。ここでは、基礎知識として建設副産物と産業廃棄物の違い、そしてなぜ今、業界全体で適正処理と削減が求められているのか、その背景と現状を解説します。

建設副産物と産業廃棄物の定義と違い

建設工事の過程で副次的に得られるすべての物品を建設副産物と呼びます。このうち、再利用ができず廃棄物処理法に基づいて処理が必要なものが産業廃棄物に分類されます。サステナビリティの観点からは、産業廃棄物の量を減らし、有価物や再利用可能な資源へと転換することが重要です。

以下の表は、建設現場から排出されるものの分類と具体例を整理したものです。

表:建設副産物と廃棄物の分類概要

分類 定義・特徴 具体例
建設副産物 建設工事に伴い副次的に得られる物品の総称 建設発生土、コンクリート塊、建設発生木材、汚泥、紙くず、金属くずなど
産業廃棄物 建設副産物のうち、廃棄物処理法で規定された20品目に該当するもの ガレキ類(コンクリート塊)、廃プラスチック類、ガラスくず・陶磁器くず、金属くず、建設汚泥など
一般廃棄物 産業廃棄物以外の廃棄物(主に現場事務所から出る生活ごみ) 従業員の弁当ガラ、茶殻、新聞、雑誌など

現場監督や作業員がこの区分を正しく理解し、混合させないことが資源循環の第一歩となります。

なぜ建設業でサステナビリティが重視されるのか

環境省の報告等によると、日本の全産業廃棄物排出量のうち、建設業が占める割合は約2割に達しており、不法投棄件数においても高い割合を示している傾向があります。この現状は、地球環境への負荷が大きく、持続可能な社会形成の妨げ要因と見なされています。

SDGs(持続可能な開発目標)や、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた動きが加速する中、建設業には以下の対応が求められています。

  • 天然資源の消費抑制
    新規資材の使用を減らし、再生資材を活用する。

  • 廃棄物の減量化
    埋立処分場の逼迫を防ぐため、最終処分量を削減する。

  • 脱炭素化
    廃棄物の運搬や焼却に伴うCO2排出を削減する。

これらは単なる環境保護活動ではなく、企業の社会的責任(CSR)の中核をなす要素となっています。

不法投棄リスクと排出事業者の責任

廃棄物処理法において、最も重要な原則の一つが排出事業者責任です。これは「廃棄物を排出する事業者が、その処理を自らの責任において適正に行わなければならない」という規定です。元請業者が排出事業者となり、処理業者へ委託した後も、最終処分が完了するまでその責任は継続します。

もし委託した業者が不法投棄を行った場合、排出事業者も以下のリスクを負う可能性があります。

  • 法的罰則
    懲役刑や罰金刑(両罰規定により法人にも及ぶ)。

  • 原状回復命令
    投棄された廃棄物の撤去費用の負担。

  • 社会的信用の失墜
    指名停止処分、銀行融資の停止、ブランドイメージの毀損。

サステナビリティ経営において、法令順守(コンプライアンス)は前提条件です。適正な処理フローを構築することは、企業防衛そのものと言えます。

サステナビリティに直結する産業廃棄物の再資源化・削減方法

産業廃棄物を削減し、サステナビリティを実現するためには、現場レベルでの具体的なアクションが不可欠です。精神論ではなく、物理的な仕組みとして「出さない・分ける・管理する」フローを構築することが求められます。ここでは、建設現場で実践すべき構造的なアプローチを3つの観点から解説します。

3R(リデュース・リユース・リサイクル)の徹底

廃棄物対策の基本は3R(スリーアール)です。建設業においては、以下の優先順位で取り組むことが環境負荷低減とコスト削減の鍵となります。

建設現場における3Rの実践フロー
  • リデュース(Reduce:発生抑制)
    廃棄物そのものの発生を元から減らすこと。工場で寸法通りに加工された「プレカット材」を活用し、現場での端材を出さない。設計段階で規格サイズに合わせた割り付け(歩留まり向上)を行う。

  • リユース(Reuse:再使用)
    使用済みのものを、そのままの形状で再利用すること。金属製型枠などの耐久性が高い資材を採用し、転用回数を増やす。現場内で発生した土(建設発生土)を、同現場の造成や埋め戻し材として有効利用する。

  • リサイクル(Recycle:再生利用)
    廃棄物を原材料として再資源化すること。混合廃棄物を避け、品目ごとに分別してリサイクル施設へ搬入する。メーカーの広域認定制度を利用し、石膏ボードなどを資源として循環させる。

徹底した分別解体と現場での保管管理

建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)では、特定建設資材(コンクリート、アスファルト・コンクリート、木材)を用いた一定規模以上の工事に対し、分別解体と再資源化を義務付けています。

  • 混合廃棄物の回避
    複数の素材が混ざった「混合廃棄物(ミンパイ)」は、選別作業に膨大なエネルギーを要するため、リサイクル率が低下し処理コストが高騰します。発生時点で分けることが鉄則です。

  • 現場保管のルール化
    品目ごとにコンテナや保管場所(ヤード)を明確に色分け・標識設置します。

  • 品質保持のための雨水対策
    保管中の廃棄物が雨に濡れると汚泥化し、再資源化できなくなる恐れがあります。シート掛けや囲いを設置し、有価物としての品質を保つことが重要です。

建設現場で種類別コンテナへ廃棄物を分別する作業員

DX活用による廃棄物管理の効率化

建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の技術を活用することで、アナログな管理から脱却し、正確なデータに基づく削減が可能になります。

  • 電子マニフェストの導入
    紙のマニフェスト(産業廃棄物管理票)を電子化することで、事務作業の手間を大幅に削減し、コンプライアンス違反のリスクを回避できます。

  • 廃棄物データの可視化
    管理システムを活用し、「どの工程で」「どの種類の廃棄物が」「何トン」発生したかを数値化します。

  • CO2排出量の算定
    廃棄物の運搬や処分に伴うCO2排出量を自動計算するツールを導入することで、脱炭素経営の指標として活用できます。これにより、発注者や投資家へのサステナビリティ報告(ESG開示)がスムーズになります。

タブレット端末で廃棄物管理データを確認する現場監督

産業廃棄物削減に取り組むサステナビリティ経営のメリット

廃棄物削減や再資源化は、現場の手間やコスト増といった「負担」として捉えられがちです。しかし、サステナビリティ経営の視点では、中長期的に大きな「利益」と「競争力」をもたらす投資となります。ここでは、具体的なメリットを解説します。

処分コストの削減と利益率の向上

産業廃棄物の処理費用は年々上昇傾向にありますが、排出量を減らし、リサイクル率を高めることでコストコントロールが可能になります。

  • 処理単価の低減
    混合廃棄物は処理単価が高額ですが、分別されたコンクリート塊や木くずは安価で引き取ってもらえる、あるいは有価物として売却できるケースがあります。

  • 最終処分費の削減
    リサイクルが進めば、埋立処分にかかる高額な費用を回避できます。

以下の表は、処理方法の違いによるコストと環境負荷への影響を比較したものです。

表:処理方法によるコストと環境負荷の比較

項目 混合廃棄物として処理 分別・再資源化して処理
処理単価 高い(選別費用が含まれるため) 安い(または有価物収入)
リサイクル率 低い 高い
最終処分量 多い 少ない
環境負荷 大きい 小さい
現場の手間 少ない(混ぜて捨てる) 多い(分ける必要がある)

初期段階の「分ける手間」をコストと考えず、トータルコストを下げるための「業務」と捉える意識改革が利益率向上につながります。

企業イメージの向上と人材確保への影響

サステナビリティへの取り組みは、企業の社会的評価(ブランディング)に直結します。

  • 公共工事への入札優位性
    国や自治体の発注工事では、環境配慮への取り組みが総合評価落札方式などで加点対象となる場合があります(経営事項審査の加点など)。

  • 人材採用への効果
    特に若い世代(Z世代など)は、就職先を選ぶ際に企業のSDGsへの姿勢や社会貢献度を重視する傾向があります。「環境に配慮したクリーンな企業」というイメージは、優秀な人材の確保に有利に働きます。

  • ステークホルダーからの信頼
    発注者、近隣住民、金融機関に対し、法令順守と環境配慮をアピールすることで、信頼関係を構築しやすくなります。

サステナビリティ実現に向けた課題と処理業者の選び方

理想的な資源循環を頭では理解していても、実際の現場では多くの課題に直面します。ここでは、現場のリアルな悩みである「手間」や「コスト」への対処法と、サステナビリティパートナーとなる優良な産廃処理業者の選び方を解説します。

現場が抱える「手間」と「コスト」への不安解消

「工期が厳しい中で分別に時間を割けない」「現場が狭くて保管場所がない」といった悩みは切実です。これらを解消し、サステナビリティを推進するための視点を紹介します。

  • 初期投資としての教育
    分別ルールが浸透していないと、やり直しが発生し余計に手間がかかります。着工前のKY(危険予知)活動や朝礼で、分別ルールを周知徹底することで、結果的に作業効率が上がります。

  • 専門業者の活用
    現場内での分別が物理的に困難な場合は、高度な選別能力を持つ中間処理施設への委託を検討します。ただし、コストとのバランスを見極める必要があります。

  • リスク回避のコストと捉える
    適当な処理による行政処分や工事停止のリスクを考えれば、適正処理にかかるコストは「企業の存続を守るための保険」と言えます。

優良な産廃処理業者を見極めるポイント

排出事業者の責任を全うし、サステナビリティ経営を実現するためには、信頼できる処理業者(収集運搬業者・処分業者)の選定が最も重要です。以下のポイントを基準にパートナーを選びましょう。

優良業者選定のチェックリスト
  • 優良産廃処理業者認定制度の有無
    都道府県等から「優良認定」を受けている業者は、遵法性、事業の透明性、環境配慮の取り組みにおいて一定の基準をクリアしています。

  • 電子マニフェストへの対応状況
    事務処理の効率化と透明性確保のため、電子マニフェストに対応していることは必須条件に近くなりつつあります。

  • 再資源化率の高さと施設能力
    搬入された廃棄物をどの程度リサイクルできているか、具体的な再資源化フローや実績を確認します。

  • 法令順守の姿勢と透明性
    処理施設の公開(見学の受け入れ)や、処理状況の報告が適切に行われているかを確認します。価格の安さだけで選ぶと、不法投棄リスクに巻き込まれる可能性があるため注意が必要です。

まとめ

建設業における産業廃棄物削減は、単なる法的義務の履行にとどまらず、サステナビリティ経営の中核をなす重要な取り組みです。

3Rの徹底、DXによる管理の効率化、そして分別解体の励行は、一見すると現場の負担に見えますが、長期的には「処分コストの削減」「企業価値の向上」「法的リスクの回避」という大きなリターンをもたらします。

まずは自社の廃棄物管理の現状を見直し、信頼できる優良な処理業者とパートナーシップを結ぶことから始めてみましょう。持続可能な建設業への転換は、一歩ずつの積み重ねから始まります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 建設リサイクル法の対象となる工事はどのようなものですか?

コンクリート、コンクリート及び鉄から成る建設資材、木材、アスファルト・コンクリートのいずれか(特定建設資材)を用い、かつ床面積80平方メートル以上の解体工事や、請負代金500万円以上の新築・増築工事など、一定規模以上の工事が対象となります。

Q2. 混合廃棄物はなぜサステナビリティの観点で避けるべきですか?

異物が混ざると再資源化(リサイクル)が著しく困難になり、最終処分場の残余容量を圧迫してしまうためです。また、選別作業に手間がかかるため処理コストが高額になり、経済的な持続可能性も損なわれます。

Q3. 小規模な現場でもサステナビリティに取り組めますか?

可能です。大規模なシステム導入ができなくても、「資材の発注ミスをなくす(リデュース)」「段ボールと廃プラスチックを分ける(リサイクル)」といった基本的な行動は、現場の規模に関わらず実践できます。小さな積み重ねが大きな環境貢献につながります。

[出典:環境省「産業廃棄物排出・処理状況」]
[出典:国土交通省「建設リサイクル法について」]

『蔵衛門クラウド』で情報伝達をスムーズに
NETIS
J-COMSIA信憑性確認
i-Construction
Pマーク
IMSM

株式会社ルクレは、建設業界のDX化を支援します