クラウドも電子小黒板も使える!
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『ルクレ☆オンライン』を開く今や完全に工事写真の標準技術となった「電子小黒板」。それに伴い、現場や現場支援向けに、蔵衛門Padや蔵衛門工事黒板を使った工事写真研修を取り入れる企業が増えています。そこで今回は、川口土木建築工業に潜入! 男女計38名もの新人が参加する研修風景は圧巻です!
講師:黒羽克之さん
現場業務を経て品質管理室で6年間、各作業所の工事写真業務を共通化、改善を推進。若手が撮影した写真や台帳も指導しています。
川口土木建築工業は、大型マンションをはじめ商業施設や公共施設の設計施工を数多く扱う建設会社。創業は1921年と、まもなく創業100周年を迎える老舗です。2019年度の新人は、工事部は現場監督として27名、現場支援業務として8名。そして営業が3名と、合計なんと38名。この人数がワンフロアに集合し、4日間の座学と1日の現場実技を受講します。
研修のスケジュールも非常に細かく設定されています。たとえば、初日の座学では「柱とは、梁とは、1階立ち上がりとは、RC造とは」から始まり、「工事写真とは何か、工事写真は何に使うのか」、昼食休憩を挟んで「撮影のポイント」、「工事写真の法的根拠・建築工事における工事写真の位置づけについて」等々、1日のプログラムでさえすべては書ききれないほどの充実ぶり。8時半から17時までビッシリと講座が続きます。
自らも講師を務める、同社品質管理室の黒羽氏は、次のように語ります。
黒羽氏「そもそも、工事写真はなぜ必要なのか? それを知らずに、ただ”撮らなきゃならないから”撮っている。そんな現場監督は意外と多いんです
なぜ工事写真を撮るのか? その理由を意識して撮るかどうかでアルバムの質が大きく違ってくると、黒羽氏はいいいます。
黒羽氏「工事写真は、いわば証拠写真。どんな工事を行ったかを証明する重要な証拠です。つまり、プラス要素の証拠であると同時に、マイナス要素の証拠にもなり得るんです。昨今、鉄筋の数や長さが足りなかったとか、穴が空いてたとか、そんなミスが大変な賠償問題になっていますよね。そうならないためにも、適切な工法で正しくやっていますよ、という証明をする必要がある。だからこそ、大量の写真を撮るんです。
それをわかっている人の写真は、何を証明しようとしているのかが伝わりやすい。被写体(工事個所)を引きで全体で見せるのか、寄りで大きく、しっかりと見せるのか。別角度でも撮っておく必要があるのか、黒板の位置、大きさ等々、ちゃんと考えて撮られています」
半ば信じられない話ですが、撮るべき箇所が隅っこの方に見切れて写っているような写真を撮る人もいるのだとか。
黒羽氏「工事内容を証明するための写真なんだから、見る人に伝わることは大前提ですよね。そうでない写真やアルバムを施主や発注主に見せるのはプロとして恥ずかしいでしょ、そんな話を研修ではしていますね」
川口土木建築工業では蔵衛門Padを導入、工事写真業務に活用中です。しかし、研修では「工事写真はデジカメが基本」というスタンスを貫いています。それには、次のような理由があるそうです。
黒羽氏「実際、現場でデジカメを使うこともまだまだあります。たとえば、工事黒板に定型以外の情報を書き込むときや、急に予定外の撮影が必要なとき。アルバムに使うかどうかは別として、ここは撮っておいた方がいいな、と思ったときなどにも使う。それをアルバムに入れる必要が生じても、蔵衛門御用達ならデジカメ写真も簡単に追加できるから困らないし。
蔵衛門Padは確かに便利だけど、デジカメで撮って、それでアルバムを作って……という作業を実際にしてみないと、蔵衛門Padのどこが便利なのかすらわからない。それに、撮った写真の順番とアルバムに乗せる写真の順番って違うじゃないですか
実際には天候や資材の搬入スケジュールの都合で撮影のやりくりをしたりするけど、アルバムでは工事の手順に添って並べ直すし、あえて写真を省いたりする。もちろん、何かトラブルがあったときのために、省いた写真もすぐに取り出せるフォルダに保存はしておきますけれど。
もっと言うと、紙の写真や検査報告書は(役所や施主が)信用しない時代になりつつあります。動画で撮れとか、ここだけ高解像度(500万画素)で撮れ、なんて言われることさえある。だから、規定の写真だけ撮っていたのではダメですね。品質を疑われないように必要と思われる写真はこちらで考えて(先回りして)撮っておくことが大切なんです。
そういう”工事写真の系統立った考え方”はデジカメを基本として学ばないと、なかなか身に着かないと思うんですよ。それをせずいきなり蔵衛門Padで始めちゃうと、省力化とか、そっちばかりに意識が行っちゃう。ただでさえ現場は忙しいから、用意された黒板の分だけ撮ってはい終わり、になりがちなんです。
最初にお話しした”なぜ工事写真を撮るのか?”の意識をデジカメでしっかり学んだ上で、実務は蔵衛門Padメインで行うのが理想的。それでこそ、黒板の綺麗さや撮影効率の良さ、アルバム作成の手軽さといった蔵衛門Padのアドバンテージを最大限に活用できると思うんですよ」
研修では、蔵衛門Padや蔵衛門御用達をテーマとした座学も行われます。配筋撮影黒板と検査黒板の説明、そして黒板の作成方法、さらに豆図を切り出すためのWindowsのSnipping Toolの使い方など、応用レベルにも及ぶ内容。研修中日には現場へ移動、デジカメ、蔵衛門Padの両方を使って撮影を体験します。
黒羽氏「現場での講習は、天候が影響するので大変です。あらかじめ晴れの場合と雨の場合で講習案を考えておいて、天気によって切り替えたりとかね
翌日は撮影した写真の取り込みと整理、アルバムの編集、印刷の実習。そして最終日には、研修内容の総まとめとしての小テストと感想文の提出が求められます。驚くべきは、この充実の研修内容を黒羽氏が一人で考え、分厚いテキストの作成まですべて行ったということ。
黒羽氏「総務部主導の研修(服務規程や社会人としてのマナーなど)内容も入っているので、これ一冊全部というわけじゃないんです。私の担当は工事部だけなので」
とはいえ、工事部のページだけでも、実に250ページ。昨年までは、その項目出しから執筆、印刷、とじ込みまで一人で行うのは大変な作業。ページの飛びや印刷ミスの確認×必要部数の作業だけでも、相当な労力です。ただ今年の印刷ととじ込み作業は、さすがに(作成部数が多いので)総務にお願いしたとのこと。
黒羽氏「始めたのは4、5年前から。毎年、あれをやっておけば良かったかなとか、あれを言わなきゃいけなかったな、などと反省しながら書き足していったら、いつの間にかここまでのボリュームになってしまいました。でも、内容はこれで大体固まったかな。研修で学ぶことは、毎年確実に増えていますね。テキストを作るのも大変だけど、研修を受ける方も大変だよね(笑)」
蔵衛門Padや蔵衛門御用達の使い方で、良くある質問や、説明がしずらいと思う個所についても聞いてみました。が、特に問題はないとのこと。現場で新人の面倒を見ることも多い先輩社員、篠田孟亮氏も次のように語ります。
篠田氏「みんな、日頃からスマホやタブレットを触っていますから、蔵衛門Padもすんなり受け入れています。建設の専門的知識さえ教えてあげれば、使い方は触っているうちに覚えてしまいますね」
研修終了後、新人の方々は各現場や部署に配置されます。黒羽氏の(研修に関わる)業務もそこで終わりかと思いきや、そうではないとのこと。
研修の内容が現場業務に活かされているか確認するために、各現場を巡回するのです。こんなところにも、黒羽氏の「人を育てること」への姿勢が表れています。
黒羽氏「当然ながら、たった一週間の研修で即戦力にはなりません。でも”毎年、新人はみんな吸収が早い”と各現場の所長は言ってくれます。これは研修の効果でしょうね。新人とはいえ、まったくの経験ゼロからじゃないのは、やっぱり大きいんです」
川口土建では、大型連休明けから、新人の方々も本格的に現場業務を始めているとのこと。素晴らしい研修の成果と蔵衛門Pad、蔵衛門御用達の実力。それらが最大限に発揮されることを私たちも信じています。