工事写真アプリ「蔵衛門」がAI・BIM連携でDX! 大成建設の協力で配筋検査カメラアプリを開発(ルクレ)

ルクレ(本社:東京都港区)が開発・販売する工事写真管理アプリ「蔵衛門」が進化を続けている。このほど大成建設の協力を得て「蔵衛門配筋カメラ」という新機能アプリが開発された。蔵衛門とBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データを連携させて、工事写真撮影に使う電子小黒板の作成から検査結果の出力までを一貫して行うもので、配筋検査の業務を大幅にスピードアップする。また、AI(人工知能)による写真自動仕分け機能も導入された。

工事写真管理を変えてきた「蔵衛門」の歩み

建設現場に欠かせない工事写真。その管理を効率化するために登場したのが、1999年に発売された「蔵衛門御用達」だ。当時、現場の施工管理者は膨大な枚数の写真を手作業で台帳化しており、記録作成が負担となっていた。蔵衛門は、デジタルでの整理・管理を可能にし、写真管理の省力化を実現した。

以来25年以上にわたり、建設業界の標準的ツールとして親しまれてきた蔵衛門は、電子小黒板を搭載した専用タブレット『蔵衛門Pad』で国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)で最高評価のVEを獲得。さらにアプリ、クラウド、パソコンソフトを統合した『蔵衛門プレミアム』をリリースするなど、建設業界におけるDX推進を一段と加速させてきた。

BIM定着のために必要だった「蔵衛門配筋カメラ」

平田 祐之介 氏
  • 大成建設
  • DX生産システム推進室
  • 課長代理 平田 祐之介 氏

その象徴が、大成建設の協力を得て開発された「蔵衛門配筋カメラ」というアプリだ。

大成建設建築本部デジタルプロダクトセンターDX生産システム推進室課長代理の平田祐之介氏は、このアプリの開発を振り返る。

「私が入社した2013年当時から、蔵衛門は社内のデファクトスタンダードでした。一方、BIMも今や建設会社の設計・施工の中心的役割を担うキーテクノロジーとなっていますが、蔵衛門と連携させることで、施工管理のワークフロー全体がさらに効率化されると感じました」(平田氏)。



生産性向上のためBIMを推進する立場として、平田氏が感じていた課題が「設計・施工の連携」だ。

「BIMの定着は、設計から施工へうまく繋がらなければ実現しません。施工側でのBIM活用の幅を広げるため、今回、蔵衛門に開発を依頼しました」(平田氏)。

多くの現場で導入している「蔵衛門」とBIMが連携すれば、施工側がBIM連携による効率化を体感できる。そうして施工にBIMが定着すると、設計側でもBIMに必要な情報の精度が高まり、設計・施工におけるBIM活用が加速する。

「結局は、使いやすさ、根付いて使えるか、が定着において重要だと感じています。その点でも『蔵衛門配筋カメラ』には期待しています」(平田氏)。

「蔵衛門配筋カメラ」とは、鉄筋工事の施工管理で、工事写真撮影に使う電子小黒板の作成から検査結果の出力までを一貫して行うものだ。

構造BIMデータから通り芯や部材記号を抽出し、平面図上に撮影位置をピンで自動的に表示する。現場担当者は迷うことなく撮影でき、写真データは電子小黒板情報と紐づけられ一元管理される。撮影位置の記録ミスや撮り忘れを防ぎ、配筋検査業務の大幅な効率化を実現する仕組みだ。

「蔵衛門配筋カメラ」アプリの画面
「蔵衛門配筋カメラ」アプリの画面。BIMデータと連携し、撮影ポイントを表すピンが平面図上に自動配置される。左下はアプリのアイコン
「ピン」が自動配置されているイメージ
図面上に撮影位置を指示する「ピン」が自動配置されるので、自分や撮影対象の位置がわかりやすい
検査シートをExcelファイルで出力するイメージ
「蔵衛門配筋カメラ」の検査報告画面。完了した検査にチェックを入れると、検査シートをExcelファイルで出力できる

現場での実証と利用者の声

鈴木 輝 氏
  • 大成建設
  • 工事係
  • 鈴木 輝 氏

この「蔵衛門配筋カメラ」は現在、大成建設が先進的な建設技術を検証する場と位置付けている「進化型DXパッケージ施工」取り組み現場で実証中だ。

その一つの現場で工事係を務める鈴木輝氏は「平面図に撮影ポイントがピンで落とし込まれているので、自分の現在位置がすぐに理解できます。紙図面に手書きで記録していた頃に比べ、作業スピードは格段に上がりそうです」と話す。

「蔵衛門配筋カメラ」には、BIMデータと連携し、工事写真管理業務を効率化するため、BIMデータから電子小黒板のデータを自動作成する機能や、撮影位置を示す「ピン」を平面図上に自動的に落とし込む機能など、6つの特長が盛り込まれている。

「撮影した場所を記録する画面でも、BIMデータを使って通り芯の情報はあらかじめ入力されているので、現場で新たに入力する手間も減ります」(鈴木氏)。

新開発の「蔵衛門配筋カメラ」を現場で検証する大成建設の工事係、鈴木輝氏の画像
新開発の「蔵衛門配筋カメラ」を現場で検証する大成建設の工事係、鈴木輝氏

「蔵衛門配筋カメラ」によって、黒板作成の多くは自動化される。

現在は「黒板支援チーム」が、配筋写真用の大量の黒板を手作業で作成している。「蔵衛門配筋カメラ」では、BIMデータから自動で黒板が生成されるため、大幅な効率化に繋がる。

さらに、大成標準の検査項目や検査シートと連携・出力できるため、従来のワークフローを変えることなく、紙からデジタルへの自然な移行が可能だ。配筋写真は自動で整理され、『蔵衛門御用達』から台帳形式で出力できる。

BIMから台帳まで一気通貫のイメージ
発売以来親しまれてきた「工事写真台帳の本棚」の見た目や操作性は変わらないが、蔵衛門はBIMやAIと連携しながら、工事写真管理のDXを着実に前進させている

「属人的な方法に頼った工事写真管理では、撮影漏れや記入ミスが避けられません。BIMと連携して写真を一元管理できれば、トラブル発生時も該当写真を迅速に探し出せます。管理の質と信頼性が飛躍的に向上すると期待しています」と平田氏は語る。


●「蔵衛門配筋カメラ」の6つの特長
  1. 1.BIMやPDFデータから黒板を自動生成
  2. 2.タブレット上で「自社フォーマット」に沿った検査が可能
  3. 3.「自社フォーマット」で検査シート出力
  4. 4.「蔵衛門クラウド」と連携し、シームレスに是正指示
  5. 5.記録写真をクラウドで一元管理
  6. 6.「クラウド台帳」と連携し、「仕分けAI」機能で配筋写真が自動整理
BIMデータから電子小黒板データを作成し、現場へのクラウド伝送しているイメージ
BIMデータから電子小黒板データを作成し、現場へのクラウド伝送も可能
蔵衛門クラウドで一元管理しているイメージ
独自基準による配筋検査や蔵衛門クラウドでの一元管理も可能

「仕分けAI」で工事写真整理を大幅に省力化

蔵衛門のもう一つの進化がAIによる自動仕分け機能だ。これまで現場監督や施工管理者が手作業で分類していた工事写真を、AIが1500種類もの工種に自動的に仕分けし、フォルダー分けを行うものだ。現場からも導入を望む声が多かった機能であり、作業時間短縮に直結しそうだ。

この機能は、蔵衛門発売以来、12億枚を超える工事写真を扱ってきたルクレの経験とノウハウによって開発されたものだ。

写真管理の省力化は、単なる作業効率化にとどまらない。撮影枚数が膨大な現場では、仕分けミスが後のトラブルの原因になることも少なくなかった。AI仕分けの導入により、ヒューマンエラーのリスクが低減し、信頼性の高い記録が確実に残されるようになる。

AIによって工事写真を自動仕分けするイメージ画像
AIによって工事写真を自動仕分けするイメージ

蔵衛門を立ち上げると最初に表示される「工事写真帳の本棚」の画面は1999年の発売以来、ほとんど変わっていない。ユーザーに安心感を与える象徴的な存在であり、全国の現場で愛用される理由の一つでもある。

この現場で副長を務める大成建設工事課長の小川雅弘氏は「忙しい現場の実務でBIMやAIといった最新技術を導入するとき、いくら生産性向上と言っても、アプリの機能や見た目が大きく変わってしまうと誰も使おうとしないでしょう。その点、蔵衛門は長年の親しみやすいデザインを残しつつ、中身の機能はどんどん便利に進化しているので、現場にも根付きやすそうです」と語る。

建設業界はいま、2024年から始まった時間外労働規制を背景に、業務効率化と働き方改革を急務としている。現場監督の業務負担軽減は、業界全体の持続可能性を左右する重要課題だ。蔵衛門は、単なる写真管理ツールの枠を超え、施工管理のDX化を推進する基盤となりつつあるのだ。

「大成建設では工事写真の業務にBIMやAIを取り入れるだけにとどまらず、将来はドローンや360度カメラを使った撮影や撮影位置入力の自動化なども視野に入れて、施工の品質確保やリスク低減、情報の透明性向上といった多面的な効果の実現も目指していきます」と平田氏は締めくくった。

現場で撮った工事写真をクラウドにアップロードしているイメージ
現場で撮った工事写真はクラウドにアップロードされる。その場で自動仕分けされ、時短にも有効だ
平田祐之介氏、鈴木輝氏、工事課長の小川雅弘氏
「蔵衛門配筋カメラ」をテスト中の現場事務所前で。左から平田祐之介氏、鈴木輝氏、工事課長の小川雅弘氏
出典:「建設ITワールド」掲載記事 https://ken-it.world/success/2025/09/kuraemon-in-taisei.html

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