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太田氏「蔵衛門Padを知ったとき、これは良さそうだと思いました。ただ、当社はすでに現場業務にiPadを導入しており、社員にハードウェアを2台持たせるのは現実的ではありませんでした。でも、いつか(iOS対応の)アプリ版が出るだろうと思って待っていたところ、期待通りリリースされたのです(笑)」
経営企画部の太田氏は、蔵衛門工事黒板導入のきっかけについてそう語る。太田氏が蔵衛門工事黒板を知ったのは、日刊建設通信新聞社発行の「電子小黒板完全ガイド」。本書には期間限定ながら全機能が使用できる体験コードも付属していたが、太田氏はそれすら使わずに、計145ライセンスもの導入を決めた。
太田氏「電子小黒板の導入自体は決定事項でした。そして、当社では同じ蔵衛門シリーズのPCソフト、蔵衛門御用達を長く使っていて、現場も操作やワークフローに慣れています。その環境を活かしたかったのです。
また、会社としては”蔵衛門工事黒板と蔵衛門御用達との連携による台帳作成の効率化”に特に期待していて、これが働き方改革関連法の遵守(労働時間の短縮や労働の削減)に大きく貢献してくれると思いました。つまり選択肢は最初から蔵衛門工事黒板一択だったのです」
ちなみに、145というライセンス数は、あくまで試験導入のための数とのこと。これらを多様な現場で運用し、その効果を測定、有効と認められれば、全社的導入を考えるという計画だ。
一方、現場では”撮影環境の改善”という面でも、蔵衛門工事黒板が非常に高く評価されている。実際に蔵衛門工事黒板を使用されている方々にお話を伺った。
桜井氏「従来のアナログ黒板は想像以上に制約が大きかったんだなと、改めて思います。たとえば、配線などのアップは黒板と一緒に撮れない。逆に現場風景を撮るときは、被写界深度の関係で現場風景か黒板、必ずどちらかがボケてしまいます。仕方なく、黒板と現場風景を別々に撮ったり……。雨が降ると文字を書きにくかったり、日光やフラッシュの光が黒板に反射してしまったりと、枚挙に暇がありません」
千葉氏「上手く撮れないと、試行錯誤を繰り返す羽目になります。たった1ショットのために何度も撮り直すので、非常に歩留まりが悪い。その点、電子小黒板はこれらの失敗がほとんどなく、それだけでも撮影時間を短縮できます。黒板が手ブレしてしまうことも絶対にありませんし。ムダなショットが少ないということは、撮影枚数も少なくて済むということ。それは、台帳作成時の作業時間短縮にも繋がります」
野呂氏「加えて、蔵衛門工事黒板を使うことで、工事写真の品質を一定に保ちやすい、という効果もあります。手書きの黒板だと、文字や撮り方にどうしても個人の癖や個性が出てしまいますが、それを半強制的に統一化できる。文字はテキストで読みやすいし、測点なども標準化できるので、誰が撮っても台帳化した際に違和感がない。これは嬉しい副次的効果ですね」
蔵衛門工事黒板の導入効果は、今回の蔵前橋のライトアップに関するプロジェクト以外でも検証されている。一例を挙げると、鉄道工事の現場からは、”持ち物が減る”ことが高く評価されたそうだ。一見当たり前の話とも思われがちだが、その意味は想像以上に大きい。
太田氏「鉄道の工事は営業時間内にはできないので、終電から始発までの短時間で行います。照明があるとはいえ、夜中の作業はやはり暗い。したがって、持ち物が多いと忘れ物をする確率が上がってしまう。もし(アナログの)黒板を線路内に置き忘れるようなことがあれば、始発の電車に当たって大事故に……といった事態にも繋がりかねません」
それは今回の蔵前橋の工事でも無関係ではない。工事現場の下には多数の船が往来しており、落下物対策にも細心の注意が払われている。持ち物を減らすことは、やはり重要なのだ。鉄道や高速道路などの現場が抱えるリスクを蔵衛門工事黒板が少しでも軽減できるなら幸いだ。
日本リーテックが蔵衛門工事黒板を試験導入して、約半年。導入効果の検証が進む中、現時点で各現場から寄せられている評価・意見について聞いてみた。
太田氏「現在、社内アンケートの回答をまとめています。まだ途中経過なので、精度も含めて最終的なものではありませんが、実はこんな意見もあります。
工事写真業務について、以前の作業時間を100%とした場合、蔵衛門工事黒板導入後は何パーセントになりましたか、という問いに対してなのですが……。なんと、20%という回答が全体の3分の1(取材時集計数)という(全員ビックリ!)。ほか、60%という回答が3分の1、80%という回答が3分の1ありました。現場によって効果の出やすいところとそうでないところもあるし、使う人の習熟度によっても差が出るでしょうね」
野呂氏「私も、60%以下にはなっていると思います。さすがに20%とまでは言いませんが……。80%と回答した現場は、台帳化時の仕分けが上手くできずに、手作業が生じているのではないでしょうか。この先、黒板の書き方や台帳の仕分け方を研究していけば、どんどん効果は上がっていくはずです」
太田氏「その実感と手ごたえはありますね。このぶんなら、全社的な本格導入の方向に進めそうです」
いかにして生産性を高めるか。建設業界全体の、そして最大の課題に、蔵衛門工事黒板は蔵衛門Padに次ぐもうひとつの選択肢として、新たな解を提示する。そう、蔵前橋に灯る明かりが、東京の未来を照らすように。
蔵前橋の現場で、実際に蔵衛門工事黒板を操作する千葉氏のお気に入りポイントは、「画面上で黒板の位置とサイズを自由に変えられること」。
千葉氏「アナログ黒板だったら絶対置けない場所にも黒板を配置できる(逃がせる)のがいいですね。撮りたい場所と黒板の内容、どちらもしっかりと記録するのは工事写真の基本ですが、これがなかなか難しい。
たとえば配電のケースの中も、蔵衛門工事黒板を入れ込んでアップで撮れる。これがアナログ黒板だったら、そもそも黒板がケースに入りません(笑)。あれほど厄介だった黒板の位置制限が完全に解消されるなんて、技術の進化を実感しますね。」