建築に興味を持ったきっかけは、中学生のときに家を新築したこと。建て替え時、庭に建てた仮設住宅で、新しい家が出来上がる過程を見ながら生活していたという。
新垣氏「登校時と帰宅時では見た目が変わっていて、あ、今日一日でずいぶん進んだなぁ、とかわかるんですよ。目の前で毎日社会科見学をしているような気分。本当はダメなんですけど、勝手にユンボの上に上がったりしていました(笑)」
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『ルクレ☆オンライン』を開く新垣氏は、青森の津軽出身。18歳で上京。「建築の勉強をしたくて。でも、青森には行きたい学校がなかったんですよ」(新垣氏)。将来は建築設計の道に進むことを希望していたが、勉強を進めるうちに施工のことも知る必要があると思い、まずは施工の仕事に就く。
新垣氏「ゆくゆくは設計に行きたいと考えています。でも、施工も楽しいんですよね。物件を実際に作る喜びを日々、目の前で感じられるから。今は泥だらけの現場でも、工事が進むごとにキレイな建物になっていく。物件が完成するたびに、大きな達成感がありますね」
建築に興味を持ったきっかけは、中学生のときに家を新築したこと。建て替え時、庭に建てた仮設住宅で、新しい家が出来上がる過程を見ながら生活していたという。
新垣氏「登校時と帰宅時では見た目が変わっていて、あ、今日一日でずいぶん進んだなぁ、とかわかるんですよ。目の前で毎日社会科見学をしているような気分。本当はダメなんですけど、勝手にユンボの上に上がったりしていました(笑)」
そんな新垣氏にとって、最も手間がかかる作業が写真の撮影と整理だという。
新垣氏「入社して3年目、4年目になってくると、図面のチェックや業者の手配、工程表の作成など、任される仕事が増えてきます。そんな状態で、1年目でもできる写真の撮影や整理に時間をかけたくないんです。
撮影枚数は多いですね。全数撮りとまでは行きませんが、基礎梁や柱などの種類が多い。基礎の黒板だけで80種類以上、底盤の配筋や加工後の寸法などを合わせると100種類以上になります。1種類につき仮に3か所撮ると、計300か所以上撮らなければなりません」
以前の現場では、CADで工事内容を書いたシートを印刷して木製黒板にテープで貼り付け、撮影していたという。木製黒板とCADで作成したシートや図面、スケールなどを抱えると両手が塞がり、たとえバランスを崩しても何かにつかまることすらできない。その恐怖心は、男性でも容易に想像できるだろう。
新垣氏「物を持ちながらの昇降って、危ないこともあるんです。黒板は足場にもガンガン当たって邪魔ですし、動きにくい。撮影時も、その都度シートをテープで貼り替えて撮影するので時間がかかります。また、黒板もただ下に置くだけではダメで、ちゃんと写るように固定しなければなりません。
固定して、撮って、黒板の内容を貼り替えて、という作業にかかる時間は、枚数が多いと結構馬鹿にならないんです。梁の配筋を撮るときは脚立に上って撮るんですが、安全性を考えて慎重に行うので、余計に時間がかかってしまいます」
そして現在の現場に配属が決まったとき、会社から蔵衛門Padが配布された。それは、新垣氏にとって、まさに「渡りに舟」だったといえる。
新垣氏「蔵衛門Padは、黒板はもちろん、図面が全部入ってしまうからいいですね。撮影も、蔵衛門Padの方がラク。黒板を好きな場所に配置できるし、ピンボケしません。黒板の貼り替えや黒板セットをしなくて済むこともあって、写真撮影にかかる時間は従来の半分以下になりましたね。それに、ストラップで肩掛けできるので両手が空きます。これなら万が一、バランスを崩しても何かにつかまれるので安心です」
現在、白石建設には、新垣氏を含め7人の女性現場監督が在籍している。現場監督として女性の採用を始めたのは5年前から。まだ途中ながら、女性が働きやすい環境づくりを急ピッチで進めているという。新垣氏に、女性現場監督として現場で働いてみての感想を聞いた。
新垣氏「これは女性には難しそう、と思える仕事は他の人が助けてくれますね。お前がそんなことをするなと、仕事を取られてしまう(笑)。上司も職人さんも、皆さん、優しいです。
昔は怒鳴り声が飛び交うなど殺伐としていて凄かったという話を聞くこともありますが、今はそんなことはありません。今は女性の職人さんも増えてきています。あと、女性がいてくれると現場の雰囲気が和む、とも言われるんですよ。それは男性にはできないことなので、そんなのも女性現場監督の役割なのかなと思ったりしますね(笑)」
長らく男性の仕事とされてきた建設土木の世界。だが、今後は女性の参加もごく当たり前になっていくだろう。その時代の流れを加速していく鍵のひとつが、蔵衛門Padをはじめとする新しい発想と優れた技術なのだ。
新垣氏は、蔵衛門Padで撮影した工事写真を画面で確認しながら、その場で配筋のチェックなどもしてしまうとのこと。
「たとえば、配筋の画面を表示しますよね。ここで、手書き機能を使ってペンツールでチェックマークを付けながら、鉄筋の数を数えていくんです。ペンツールをチョーク代わりに使っちゃう。これで、配筋が正しいかどうかチェックできてしまいます。あとは、事務所に戻ってこれを一覧で印刷すれば、そのままチェックシートになるんです。これはとっても便利ですね」